藤原親経

藤原親経（ふじわら の ちかつね）

藤原親経は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて活躍した公卿です。仁平元年（1151年）に生まれ、承元4年（1210年）に60歳で亡くなりました。藤原北家真夏流（大福寺流）の出身で、父は参議の藤原俊経です。官位は従二位・権中納言にまで昇りました。

生涯

後白河院政期初期の仁安3年（1168年）に文章得業生となり、官界でのキャリアをスタートさせました。高倉天皇の蔵人や大学助を経て、承安元年（1171年）に従五位下に叙爵、承安2年（1172年）には宮内権少輔に任官しました。

治承2年（1178年）には春宮・言仁親王（後の安徳天皇）の学士を兼任し、治承3年（1179年）には再び高倉天皇の蔵人を務めました。治承4年（1180年）に言仁親王が践祚すると、親経は高倉院の判官代となりました。

文治元年（1185年）には、源頼朝の推挙により、上﨟の蔵人であった藤原親雅・藤原定経を超えて右少弁に任ぜられます。その後も、文治4年（1188年）に権右中弁、文治5年（1189年）に従四位上・右中弁、建久元年（1190年）に正四位下・左中弁、建久6年（1195年）に右大弁と、弁官として順調に昇進しました。

この間、記録所勾当、氏院別当、造興福寺長官、御書院別当、率分勾当などを兼任し、建久5年（1194年）には文章博士にも任ぜられました。また、後白河院の院司や九条兼実の家司も務めるなど、多方面で活躍しました。

建久9年（1198年）に土御門天皇が践祚すると、親経は後鳥羽院別当に補任され、同年12月には蔵人頭も兼ねています。正治2年（1200年）には参議に任ぜられて公卿の仲間入りを果たし、その後も建仁元年（1201年）に従三位、建仁3年（1203年）に正三位へと昇進を続けました。

建仁4年（1204年）には左大弁を兼任し、約6年ぶりに弁官に復帰。その後、造東大寺長官、勘解由長官、式部大輔なども兼帯しました。

建永元年（1206年）に権中納言に昇任しましたが、承元2年（1208年）7月に息子の親宗を蔵人に補任させる代わりに、自らは中納言を辞任。同年12月には従二位に至りました。承元4年（1210年）11月11日、熊野参詣の途上の紀伊国藤代宿で亡くなりました。

人物・学識

親経は漢詩に秀でており、後鳥羽天皇と土御門天皇の二代にわたって侍読を務めました。九条兼実からは「当時の儒者で右に出る者はいない」と絶賛されるほどの学識の持ち主でした。

元久2年（1205年）には、『新古今和歌集』の真名序文を作成しました。日記として『親経卿記』、著書として『角黄記』『東大寺供養式』などがあります。

官歴

親経は、以下の官歴を辿りました。

永万元年（1165年）3月：給氏院学問料
仁安3年（1168年）3月2日：秀才
嘉応2年（1170年）正月18日：因幡掾、2月9日：献策、8月28日：六位蔵人、12月5日：大学助
承安元年（1171年）5月24日：叙爵
承安2年（1172年）6月26日：宮内権少輔
治承元年（1177年）正月24日：従五位上（策労）
治承2年（1178年）12月15日：東宮学士（春宮・言仁親王）
治承3年（1179年）10月10日：五位蔵人
治承4年（1180年）正月29日：越前権介、2月21日：止学士（依践祚也）、4月21日：正五位下
文治元年（1185年）12月29日：右少弁
文治3年（1187年）日付不詳：記録所勾当、12月4日：辞蔵人
文治4年（1188年）10月14日：権右中弁
文治5年（1189年）正月5日：従四位下、7月10日：右中弁、11月1日：従四位上（父俊経去久寿元年住吉造宮国司賞）
建久元年（1190年）4月11日：加判儒、8月13日：兼右宮城使、8月26日：侍読、10月27日：左中弁、12月14日：正四位下（平野大原野行幸行事賞）、12月22日：装束司
建久2年（1191年）正月：服解（父）、5月2日：復任
建久3年（1192年）正月29日：兼左宮城使、7月24日：後院別当
建久4年（1193年）正月29日：備後介（装束司兼国）、2月1日：兼造興福寺長官、氏院別当、2月：御書所別当
建久5年（1194年）11月27日：文章博士
建久6年（1195年）12月9日：右大弁
建久7年（1196年）正月28日：能登権守（大弁労）
建久9年（1198年）正月19日：聴新帝昇殿、補後鳥羽院別当、12月9日：左京権大夫、蔵人頭、去弁博士
正治2年（1200年）3月6日：参議、去大夫
建仁元年（1201年）正月6日：従三位、正月29日：兼備前権守
建仁3年（1203年）正月5日：正三位
建仁4年（1204年）3月6日：兼左大弁、3月29日：兼造東大寺長官、4月12日：兼勘解由長官
元久2年（1205年）正月29日：兼周防権守、4月16日：兼式部大輔
建永元年（1206年）3月28日：権中納言
承元2年（1208年）7月9日：辞退（男親宗補蔵人）、12月9日：従二位
承元4年（1210年）11月11日：薨去

系譜

親経の系譜は以下の通りです。

父：藤原俊経
母：平実親の娘
妻：藤原親光の娘
男子：藤原親資
妻：藤原季行の娘
男子：藤原宗親
生母不詳の子女
男子：藤原兼経
男子：藤原行経
男子：親遍

参考文献

安田元久『鎌倉・室町人名事典』（新人物往来社、1990年）
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
* 飯倉晴武校訂『弁官補任 第一』続群書類従完成会、1983年

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