赤石鉱山 (鹿児島県)

赤石鉱山の概要

赤石鉱山は、鹿児島県南九州市知覧町塩屋に位置する金鉱山です。この鉱山では、金だけでなく含金珪酸鉱も採掘されており、三井串木野鉱山株式会社と有限会社宮内赤石鉱業所が共同で採掘を行っています。

地質学的特徴

鉱山は、南九州市の枕崎市との境界近く、標高約185メートルの場所に位置しています。周辺地域は、第四紀の阿多カルデラの噴火によって生じた火砕流堆積物が広く分布し、平坦な台地を形成しています。地表下には、ジュラ紀の川辺層群に属する砂岩や頁岩、玄武岩質の緑色岩などが存在しますが、これらは地下深く、約200メートル以深に分布しています。さらにその上には、新第三紀中新世の南薩層群、鮮新世の南薩中期火山岩類が重なり、最上部には第四紀更新世の阿多火砕流堆積物と姶良カルデラの噴出物が堆積しています。

鉱床の形成

赤石鉱山の鉱床は、高硫化型熱水性金鉱床、別名南薩型金鉱床として知られています。これは、枕崎市にある岩戸[[鉱山]]や春日鉱山と同様の成因を持つと考えられています。鉱床は、南薩中期火山岩類の安山岩に熱水が流入し、酸性変質作用を受けた結果、珪化岩が生成されたものです。この珪化岩と安山岩の境界付近には、珪化変質の度合いに応じて、様々な鉱物帯が層状に形成されています。熱水の流入は複数回にわたり、成分の異なる熱水が鉱床の生成に関与したと推定されています。

具体的には、最初に酸性熱水が流入して安山岩から斑晶や捕獲岩片が溶脱し、珪酸が相対的に濃縮されることで溶脱型珪化作用が起こり、その後、中性熱水が上昇して石英や金が沈殿する付加型珪化作用が発生しました。さらに、酸化鉱物が生成され、二次富化として天水によって鉄や金が再沈殿することで鉱床が形成されました。鉱床は、珪化岩の中に鉱染状に金鉱石が含まれる形となっており、赤石鉱山では、鉱石1トン当たり3グラム以上の金を含む部分を鉱体としています。

鉱床の生成時期は、古地磁気による判定では、約418万年前から約358万年前のステージIと、約358万年前から約322万年前のステージIIの2段階に分けられます。また、第1鉱体の明礬石に対するカリウム-アルゴン法による年代測定では、約370万年前と推定されています。この年代は、岩戸[[鉱山]]や春日鉱山よりも新しく、薩摩半島の火山活動が西から東へ順に移動したことと一致します。

鉱床の形状は、東西約300メートル、南北約200メートル、深さ約270メートルの楕円形で、その中に第1から第4までの鉱体が菱形に配置されています。各鉱体の規模と平均金品位は以下の通りです。

第1鉱体：90メートル×50メートル×125メートル、平均金品位7.4グラム/トン
第2鉱体：80メートル×30メートル×80メートル、平均金品位7.7グラム/トン
第3鉱体：80メートル×30メートル×80メートル、平均金品位5.5グラム/トン
第4鉱体：80メートル×20メートル×40メートル、平均金品位6.2グラム/トン

赤石鉱山は、稼働中の南薩型鉱床の中では最も高品位ですが、鉱脈型の菱刈鉱山と比較すると低品位です。しかし、露天掘りや機械化された大規模坑内掘りに適しており、低コストでの採掘が可能なため、現在も操業が続けられています。鉱石には、トジ金（粒状の自然金）を含む高品位金鉱石が見られ、その他にルソン銅鉱、黄鉄鉱、硫砒銅鉱、自然硫黄、スコロダイト、褐鉄鉱などが含まれています。

歴史

赤石鉱山の歴史は、1890年に高良裕二郎氏が露頭を発見したことに始まります。1903年には宮内敬二氏が鉱業権に共同加入し、赤石野岡鉱山として小規模な操業を開始しました。1906年には宮内氏が全権利を譲り受け、単独経営となり、1912年に赤石鉱山と改称しました。1912年から1935年までは、高品位な部分を選んで坑内掘りを行い、アマルガム法で製錬していました。1935年以降は、手作業で選別した高品位鉱石を、含金珪酸鉱として販売しました。

1943年には金鉱業整備令により多くの金山が閉山されましたが、赤石鉱山は操業継続が認められました。1968年には有限会社宮内赤石鉱業所として法人化し、1976年からは坑内掘りと露天掘りを併用するようになりました。1986年に一時休止しましたが、1987年に三井串木野鉱山が共同鉱業権者となり、操業を再開しました。その後、採掘方法もメカナイズド・カットアンドフィル法に変更されました。現在では、標高180メートルを境に、上部を露天掘り、下部を坑道掘りで採掘しています。

1912年から2019年までの間に、赤石鉱山では合計240万トンの金鉱石が採掘され、約13トンの金が生産されました。2019年時点では、含金珪酸鉱を年間75,000トン、平均金品位約2.3グラム/トンで操業しています。

採掘方法の変遷

初期の採掘は、坑内掘りによる選択的な高品位鉱石の採掘でした。その後、手作業による選別を経て、露天掘りが導入されました。坑内掘りでは、ルーム・アンド・ピラー法が用いられましたが、1987年の操業再開後は、メカナイズド・カットアンドフィル法が採用されました。現在では、露天掘りと坑道掘りを併用し、機械化された採掘システムで効率的な採掘が行われています。

まとめ

赤石鉱山は、その長い歴史の中で、地質学的にも採掘技術的にも様々な変遷を遂げてきました。現在も、南薩型金鉱床の中で最も高品位な鉱山の一つとして、その役割を果たし続けています。

もう一度検索