80条バス運行事業者一覧

自家用有償旅客運送（旧80条バス）運行事業者一覧

日本の地域公共交通において、特定の条件下で自家用自動車を用いて有償で旅客を運送する形態に「自家用有償旅客運送」があります。これは、主に公共交通機関による移動手段の確保が困難な地域において、住民の生活に必要な移動を支えるために導入されている制度です。

この運行形態は、かつて道路運送法第80条に規定されていたことから「80条バス」や「旧80条バス」と通称されます。2006年の道路運送法改正により、関連条文は第78条および第79条に移されましたが、現在も旧称である「80条バス」が広く用いられています。本記事では、この通称にならい「80条バス運行事業者」として、国土交通大臣の登録を得てこの事業を実施している、または過去に実施していた地方自治体やそれに準ずる団体などを地域別に一覧として紹介します。

現存する運行事業者

現在も自家用有償旅客運送を実施している事業者は、全国各地の地方自治体を中心に多数存在します。これらの事業者は、人口密度の低い地域や過疎地域、既存の路線バス網から外れた地域などで、住民の通院、買い物、通勤・通学などの移動ニーズに応える重要な役割を担っています。運行主体は市町村などの自治体であることが多く、「〇〇町営バス」「△△市民バス」「□□村営バス」といった名称で運行される例が見られます。一部には、地域協議会や特定非営利活動法人などが運行を担うケースもあります。

北海道: 西興部村、湧別町、遠軽町、津別町、標茶町、美唄市、三笠市、栗山町、長沼町、新篠津村などが村営・町営・市民バスなどを運行しています。
東北地方: 青森県の外ヶ浜町、今別町、岩手県の奥州市、北上市、宮城県の南三陸町、大崎市、山形県の遊佐町、酒田市、福島県の葛尾村、広野町など、各県の様々な市町村が独自の生活交通手段を提供しています。
関東地方: 茨城県の結城市、栃木県の那須町、大田原市、群馬県の高崎市、下仁田町、埼玉県の秩父市、小鹿野町、千葉県の神崎町、南房総市、東京都の神津島村、小笠原村などが、地域の特性に応じたバスや巡回バスを運行しています。
中部地方: 長野市の長野市営バス、新潟県の新発田市コミュニティバス、富山県の魚津市民バス、石川県の七尾市コミュニティバス、福井県の大野市営バス、静岡市の井川地区自主運行バス、愛知県のおでかけ北設、岐阜県の安八コミュニティバス、三重県の木曽岬町自主運行バスなど、多様な運行主体が存在します。
近畿地方: 滋賀県の長浜市、高島市、京都府の京丹後市、舞鶴市、福知山市、大阪府の太子町、河南町、兵庫県の新温泉町、豊岡市、奈良県の明日香村、宇陀市、和歌山県の田辺市、古座川町などがそれぞれの地域で交通サービスを展開しています。
中国地方: 鳥取県の岩美町、鳥取市、島根県の安来市、松江市、岡山県の美作市、奈義町、広島県の尾道市、神石高原町、山口県の和木町、岩国市など、多くの自治体が地域住民の移動を支えています。
四国地方: 徳島県の鳴門市、三好市、香川県の三木町、坂出市、愛媛県の新居浜市、久万高原町、高知県の香南市などが運行を行っています。
九州・沖縄地方: 福岡県の豊前市、川崎町、佐賀県の多久市、小城市、長崎県の東彼杵町、対馬市、熊本県の甲佐町、山都町、大分県の中津市、杵築市、宮崎県の五ヶ瀬町、高千穂町、鹿児島県の長島町、霧島市、沖縄県の久米島町、国頭村など、離島や山間部を含む多くの地域で自家用有償旅客運送が実施されています。

これらの事業者は、地域の高齢化や公共交通の衰退といった課題に対応するため、必要不可欠な存在となっています。

かつて運行していた事業者

自家用有償旅客運送は、地域の交通状況の変化や法制度の見直しに伴い、その形態を変えたり、運行を終了したりするケースも見られます。過去にこの方式で運行していた事業者の中には、市町村合併により事業主体が変わった例、他の道路運送法に基づく形態（例えば、一般乗合旅客自動車運送事業である「4条路線バス」や、別の自家用有償旅客運送、あるいはデマンド型交通など）へ移行した例、または利用者の減少などにより運行自体を廃止した例などがあります。

例えば、北海道の猿払村、岩手県の種市町、栃木県の黒羽町、埼玉県のときがわ町（旧都幾川村・玉川村）、神奈川県の藤野町、山梨県の鰍沢町、愛知県の東郷町（4条移行）、岐阜県の根尾村（現本巣市）、滋賀県の湖北町、京都府の福知山市（旧大江町・夜久野町・三和町）、兵庫県の関宮町、奈良県の大宇陀町、和歌山県の旧中辺路町・本宮町（現田辺市）、鳥取県の名和町、島根県の平田市、岡山県の旧美作町、広島県の御調町、山口県の錦町、愛媛県の柳谷村、福岡県の嘉麻市（旧山田市）、長崎県の江迎町、大分県の山国町、宮崎県の西都市、鹿児島県の福山町、沖縄県の旧与那城町・勝連町（現うるま市）などが、かつて自家用有償旅客運送を行っていた事業者として挙げられます。

これらの事例は、地域交通の維持・確保がいかに継続的な課題であるかを示しており、その解決策として様々な取り組みが行われてきた歴史の一端をうかがい知ることができます。

関連事項

自家用有償旅客運送の制度や運行実態については、以下の関連する項目も参照することで、より深く理解することができます。

自家用有償旅客運送（旧80条バス）
自家用バス（使用車両）
廃止代替バス（路線バス廃止後の代替策の一つ）
コミュニティバス（自治体等が主体となる公共交通）
日本のコミュニティバス一覧
乗合タクシー / デマンド型交通（地域交通の他の形態）

この一覧は、国土交通省の登録情報などを基に作成されていますが、すべての事業者を網羅しているわけではなく、情報の更新が追いついていない場合もあります。地域の交通事情は常に変化しており、新たな運行が開始されたり、既存の運行が変更・終了されたりしています。

（本記事は完全なものではありません。情報の追加や修正にご協力いただける方を求めています。）

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