建安 (漢)

後漢の元号「建安」について

建安（けんあん）は、後漢の献帝（劉協）の治世で使用された元号の一つで、196年から220年までの期間を指します。永漢を除くと、献帝の治世では3番目の元号にあたります。この時代は、後漢王朝の衰退が顕著になり、各地で群雄が割拠し、後の三国時代へと繋がる激動の時代でした。

建安の終焉とその後

建安25年（220年）には、元号が延康に改められます。しかし、蜀漢や呉ではこの改元を認めず、蜀漢は建安を26年（221年）まで、呉は27年（222年）まで使用し続けました。これは、後漢王朝の権威が失墜し、各地の勢力が独自の動きを見せていたことを象徴しています。

建安元年（196年）

建安元年、献帝は安邑で建安と改元しました。この年、曹操は献帝を迎えようとしましたが、董承に阻まれます。その後、献帝は楊奉や韓暹に連れられて洛陽に帰還しますが、最終的に董承と曹操に従い、許昌に遷都しました。曹操は楊奉を討伐し、司空と車騎将軍に任じられ、袁紹は大将軍となります。また、この年には屯田制が開始されました。一方、劉備は呂布に徐州を奪われ、張済が戦死する出来事も起こりました。

建安2年～5年（197年～200年）

建安2年、曹操は張繡に敗北します。袁術が寿春で帝を僭称し、孫策が袁術から自立しました。曹操は陳において袁術を討ち、郭汜が部下に殺害されます。3年には、曹操が軍師祭酒を設置し、李傕が献帝の追討軍に斬られました。曹操は徐州の下邳で呂布を討伐し、張楊が部下に殺害されます。4年には、袁術が病死し、劉勲が孫策に敗れます。袁紹は公孫瓚を討伐しました。5年、曹操は董承らを処刑し、徐州で反逆した劉備を討ちました。官渡の戦いでは、曹操が袁紹を破ります。また、この年には孫策が死去し、孫権が後を継ぎました。さらに、儒学者の鄭玄が死去しています。

建安7年～10年（202年～205年）

建安7年、袁紹が病死し、後継者を巡り袁尚と袁譚が争います。9年、曹操は鄴を攻略し、冀州牧となり、高幹と匈奴の呼廚泉が曹操に臣従しました。公孫度が病死し、公孫康が後を継ぎます。10年には、曹操が袁譚を斬り、黒山賊の張燕が曹操に降伏しました。また、三郡の烏丸が征伐されました。

建安11年～15年（206年～210年）

11年には、曹操が反逆した高幹を破り、并州を平定し、運河を築きます。12年、曹操は烏丸を征討し、蹋頓単于を斬りました。公孫康は袁尚と袁煕を斬り、その首級を曹操に送り臣従しました。劉備は「三顧の礼」により諸葛亮を迎え、蔡琰が帰国します。13年には、曹操が三公を廃止して丞相を設置し、自ら丞相となりました。秋には、曹操が荊州に侵攻し、劉表が病死、劉琮が降伏。劉備は劉琦を頼り逃走し、赤壁の戦いでは、周瑜の活躍により、劉備・孫権連合軍が曹操を破りました。この年、馬騰が入朝し、孔融が曹操に処刑されました。14年、劉琦が病死します。15年、曹操が銅雀台を築き、周瑜が病死。劉備が荊州の大半を支配し、孫権が士燮を服属させて交州を支配しました。

建安16年～20年（211年～215年）

建安16年、曹操は潼関にて馬超・韓遂を討ち、関中を平定。劉備は益州に迎えられました。17年、曹操は再び孫権を征討し、夏侯淵は馬超達の残党を掃討。18年、孫権が曹操に和睦を請い臣従し、曹操は魏公となります。馬超は氐と再び反乱しますが、夏侯淵に敗北しました。19年、劉備は劉璋を攻めて益州を領有し、馬超が劉備に仕えます。孫権は曹操と戦い、伏皇后が廃立されました。夏侯淵は宋建を討伐します。20年、曹操は娘を皇后とし、五斗米道の張魯を討ち、漢中を平定しました。曹操はテイを再び討ち、巴郡も平定。孫権、劉備、関羽が荊州を争うも和睦。曹操は孫権と再び戦い、六等級の爵位制度が始まりました。

建安21年～24年（216年～219年）

21年、曹操は魏王に封じられ、代郡の烏丸が服属しました。呼廚泉が入朝。曹操は孫権と再び戦います。22年、孫権が曹操と和睦。疫病が流行し、王粲らが病死します。劉備は下弁で曹洪と戦いました。23年には吉丕の乱が発生しました。24年、侯音の乱が発生し、関羽が北上して曹仁と戦います。劉備は定軍山で夏侯淵を斬り、漢中を領有し、漢中王を号しました。孫権は関羽を斬り、荊州を奪いました。

建安時代の影響

建安の時代は、政治的には後漢王朝の衰退と群雄割拠の時代であり、軍事的にも数多くの戦乱が繰り広げられた激動の時代でした。しかし、この時代には、後の三国時代を築く基礎が形成されただけでなく、文学や文化面でも「建安文学」という独特のスタイルが生まれました。この時代は、後の中国史に大きな影響を与えることとなりました。