瑞泉寺 (鎌倉市)

瑞泉寺

瑞泉寺は、神奈川県鎌倉市二階堂に位置する臨済宗円覚寺派の寺院です。山号を錦屏山といい、本尊は釈迦如来です。この寺は、鎌倉三十三観音の第6番札所、鎌倉二十四地蔵の第7番札所としても知られ、境内は国の史跡、庭園は国の名勝に指定されています。また、神奈川県の歴史的風土特別保存地区にも指定されており、歴史と自然が調和した場所です。

歴史

瑞泉寺は、鎌倉幕府の幕臣であった二階堂道蘊によって、嘉暦2年（1327年）に創建されました。当初は瑞泉院と号し、夢窓疎石を開山として迎えました。その後、足利尊氏の四男であり、初代鎌倉公方であった足利基氏が夢窓疎石に帰依し、寺を中興して寺号を瑞泉寺と改めました。それ以来、瑞泉寺は鎌倉公方足利家の菩提寺となっています。

山号の「錦屏山」は、四季折々の景色が屏風絵のように美しいことから名付けられました。康暦年間には準十刹の第三位に、至徳4年（1387年）には関東十刹に列せられるなど、格式高い寺院として栄えました。夢窓派の拠点として重要な役割を果たしましたが、公方家4代の足利持氏による永享の乱で一時衰退しました。

文学や学問との関わりも深く、夢窓疎石が庭園の奥に建てた徧界一覧亭は、鎌倉五山の僧侶たちの五山文学の中心地として栄えました。近世には、徳川光圀が自身の鎌倉旅行をまとめた『新編鎌倉志』を編纂させたことでも知られています。境内には、久米正雄の墓をはじめ、高浜虚子、久保田万太郎、吉野秀雄、大宅壮一、山崎方代、吉田松陰など、多くの文化人の碑があります。現在の住職は歌人の大下一真氏です。

夢窓疎石と瑞泉寺

夢窓疎石は、景勝の地を選んで寺院や庵を建立することで知られており、瑞泉寺もまた、風光明媚な場所に建てられました。夢窓疎石は円覚寺開山である無学祖元の孫弟子であり、円覚寺、南禅寺、浄智寺など、多くの五山の住職を務めました。後醍醐天皇をはじめとする南北両朝の帝から七つもの國師号を授与されたことから、「七朝の帝師」とも呼ばれています。

足利尊氏は夢窓疎石を敬い、「仁山」という法号を贈り、弟の直義にも「古山」という法号を与えました。この縁により、瑞泉寺は後に鎌倉公方足利家の菩提所となりました。夢窓疎石は作庭家としても優れており、彼が作庭した美濃の虎渓山永保寺、甲斐の恵林寺、京の天龍寺、苔寺として知られる西芳寺の庭園は、瑞泉寺の庭園とともに、国の特別名勝・名勝に指定されています。

境内

瑞泉寺のある一帯は紅葉ヶ谷と呼ばれる谷戸に位置し、境内は四季折々の花で彩られています。梅、つつじ、牡丹、マンサクなど、一年を通して花が絶えることがなく、特にスイセンが有名な「花の寺」として知られています。本堂裏の庭園は、夢窓疎石によって岩盤を削って作られた禅宗様庭園で、書院庭園の起源とされています。かつて荒廃していた庭園は、後に発掘復元されました。

総門脇から入る山道は、裏山を通って建長寺や今泉方面へ続く天園ハイキングコースの一部となっています。裏山には、得宗最後の北条高時の首塚伝説が残る「首やぐら」と呼ばれるやぐら群があります。

境内には、総門、山門、仏殿、書院、客殿、地蔵堂、開山堂、庫裡、鐘楼（「錦屏晩鐘」という鐘があります）、本堂、やぐら群、足利基氏廟所（非公開）、夢窓疎石作庭園、徧界一覧亭（非公開）、南芳庵、保寿軒、吉祥斉（3棟の茶室がありますが一般利用は不可）があります。また、山崎方代歌碑、吉野秀雄歌碑、久保田万太郎句碑、高浜虚子句碑、大宅壮一評論碑、吉田松陰留跡碑など、多くの記念碑も建立されています。

境内にある記念碑

山崎方代歌碑
吉野秀雄歌碑
久保田万太郎句碑
高浜虚子句碑
大宅壮一評論碑
吉田松陰留跡碑

文化財

重要文化財

彫刻
木造夢窓国師坐像 1躯 - 南北朝時代の作品です。

国の史跡

瑞泉寺境内 - 近年、凝灰岩盤をえぐる彫刻的な手法で造られた池庭が、ほぼ創建当初の地割に従い発掘復元され、錦屏山上の一覧亭に至る登坂路とともに保存されています。

国の名勝

瑞泉寺庭園 - 夢窓疎石が作庭した方丈書院の庭園です。長らく埋もれて荒廃していましたが、1969年から1970年にかけて古図面と発掘調査に基づいて復元されました。凝灰岩の岩盤を掘り込んだ大胆な造形が特徴で、鎌倉時代に作られた唯一の庭園であり、書院庭園の始まりとして貴重な存在です。

鎌倉市指定文化財

絵画
紙本墨画 竹斎読書図 1面
紙本淡彩 西湖図六曲屏風 1双
絹本著色 仏涅槃図（描表装） 1幅
紙本著色 朱衣達磨図 1幅
絹本著色 夢窓和尚像 1幅
彫刻
木造 地蔵菩薩立像 1躯
木造 千手観音坐像 1躯
書跡
紙本墨書 扶桑五山記 5巻（5冊）
紙本墨書 夢窓疎石墨跡 1幅
紙本墨書 固山一鞏墨跡 1幅
典籍
大光明蔵 3巻（3冊）
古文書
木造 報恩寺梁牌銘 2面
有形民俗
庚申塔（享保八年銘） 1基
天然記念物
オウバイ 1株
フユザクラ 1株

交通

JR横須賀線・江ノ島電鉄鎌倉駅より京浜急行バス「大塔宮」（鎌倉宮）下車、徒歩10分。

脚注

参考文献

河井恒久 等編 編「巻之二 瑞泉寺」『新編鎌倉志』 第5冊、大日本地誌大系刊行会〈大日本地誌大系〉、1915年、28-38頁。
「山之内庄二階堂村上瑞泉寺」『大日本地誌大系』 第39巻新編相模国風土記稿4巻之90村里部鎌倉郡巻之22、雄山閣、1932年8月、349-354頁。

関連項目

関東地方の史跡一覧
関東十刹
武家の古都・鎌倉

外部リンク

臨済宗円覚寺派 瑞泉寺

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