アフガニスタンの歴史

アフガニスタンの歴史：古代文明から現代紛争まで

アフガニスタンは、中央アジアに位置する歴史深く、多様な文化が交錯する国です。その歴史は、先史時代から現代まで、数々の文明興亡、王朝交代、そして国際紛争を経験してきました。本稿では、アフガニスタンの歴史を概観します。

先史時代

考古学的調査により、アフガニスタンには旧石器時代から新石器時代にかけて、人々が広く居住していたことが判明しています。ヒンドゥークシュ山脈周辺やアム・ダリア川流域からは、数万年前の石器が出土し、農業と牧畜の開始は紀元前1万年頃と推定されます。バダフシャン産のラピスラズリは、古代からインドやエーゲ海地域に輸出され、国際貿易の中継地としての役割を担っていました。

インダス文明とオクサス文明

紀元前2600年から1900年にかけて栄えたインダス文明は、アフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈周辺にも遺跡を残しています。一方、アム・ダリア川上流周辺では、オクサス文明（バクトリア・マルギアナ複合）が発展し、メソポタミア文明やインダス文明との交流も確認されています。これらの文明は、後世のアフガニスタン文化に影響を与えました。

古代のアフガニスタンとヴェーダ時代

古代のアフガニスタンは、インド、イラン、中央アジアの文化が交わる要衝でした。リグ・ヴェーダの記述によると、紀元前12世紀頃には、アフガニスタン東部からパンジャブにかけて勢力を伸ばしていたトリツ族とバラタ族が、十王戦争で勝利を収め、後のクル族の支配階層を形成しました。マハーバーラタでは、クル族の子孫であるカウラヴァ王家の衰退と、ガンダーラの台頭とアケメネス朝への服属が描かれています。

アケメネス朝ペルシアとアレクサンドロスの遠征

紀元前6世紀、アケメネス朝ペルシアはアフガニスタンを版図に含め、様々な州を設けて統治しました。しかし、紀元前4世紀にはアレクサンドロス3世のマケドニア王国が征服し、ヘレニズム文化が流入しました。アレクサンドロス死後、アフガニスタンはセレウコス朝シリア、マウリヤ朝インドなどによって支配され、仏教が盛んになりました。

グレコ・バクトリア王国と続く諸王朝

紀元前3世紀、バクトリア地方ではグレコ・バクトリア王国が独立し、その後インド・グリーク朝、インド・スキタイ王国、インド・パルティア王国、クシャーナ朝などが興亡しました。クシャーナ朝は、ガンダーラ地方を中心に大帝国を築き、仏教美術の隆盛をもたらしました。クシャーナ朝滅亡後、サーサーン朝、エフタル、キダーラ朝、アフリーグ朝、そしてカブール・シャヒ朝など、様々な勢力が台頭します。

イスラーム化とガズナ朝

イスラーム教の普及に伴い、ターヒル朝、サッファール朝、サーマーン朝といった地方勢力が勃興しました。10世紀には、ガズナ朝がアフガニスタン全土を統一し、インドへの遠征も行いました。その後、セルジューク朝、ホラズム・シャー朝、ゴール朝などが台頭しますが、13世紀にはモンゴル帝国の侵略を受けます。

ティムール朝とその後

14世紀末、ティムール朝はアフガニスタンを征服し、ヘラートが文化の中心地として栄えました。その後、シャイバーニー朝に征服されたのち、ムガル朝とサファヴィー朝の抗争期を経て、ホータキー朝、アフシャール朝が興ります。

ドゥッラーニー朝とバーラクザイ朝

18世紀半ば、アフマド・シャー・ドゥッラーニーがドゥッラーニー朝を建国し、アフガニスタンの統一を進めました。しかし、19世紀初頭にはバーラクザイ朝が台頭しました。この時代、アフガニスタンは、イギリスとロシアの勢力争い（グレートゲーム）の舞台となりました。

アフガニスタン首長国とイギリス保護国期

19世紀、アフガニスタンはイギリスとの間に戦争を繰り返し、結果的にイギリスの保護国となりました。デュアランド・ラインの国境画定は、現在も続くパキスタンとの国境問題を引き起こす要因となっています。

アフガニスタン王国と共和国の成立

20世紀初頭、アフガニスタンは独立を回復し、アマーヌッラー・ハーンのもとで近代化が進みますが、保守派からの反発も招きました。その後、ザーヒル・シャー、そしてムハンマド・ダーウードの時代を経て、1973年にアフガニスタン共和国が成立、その後、1978年の四月革命で人民民主党政権が誕生します。

ソ連侵攻とアフガニスタン紛争

1979年、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻し、長期間にわたるソ連・アフガニスタン戦争が勃発しました。この紛争は、アメリカ合衆国やパキスタンによるムジャーヒディーンへの支援、そして冷戦構造の中で国際的な問題となりました。

ターリバーン政権とその後

ソ連軍撤退後、アフガニスタンでは内戦が続き、ターリバーン政権が成立、そしてアメリカ同時多発テロ事件をきっかけにアメリカ軍が侵攻、長期間にわたるアフガニスタン戦争が勃発しました。2021年、アメリカ軍撤退後、ターリバーンが再びアフガニスタンを制圧し、アフガニスタン・イスラム首長国を樹立しました。アフガニスタンの歴史は、現在もなお流動的な状況にあります。

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