イタリアの軍事史

イタリアの軍事史は、紀元前509年のローマ共和国成立から現代のイタリア共和国に至るまで、イタリア半島とその周辺地域における軍事的な出来事を包括的に扱います。この地域は、古代ローマから中世、近世、そして現代に至るまで、数多くの戦争や紛争の舞台となってきました。

古代ローマ

共和制期

共和制ローマ軍は、当初、市民兵による重装歩兵を主体としていました。これは古代ギリシアの都市国家の影響を受けたもので、資産階級に応じて兵種が分けられ、政治的な集会でもこの階級区分が活用されました。初期のローマ軍はファランクスのような防御的な戦術を基本としていましたが、紀元前3世紀までにはマニプルスという小規模な分隊制度を導入し、攻撃的な戦術へと転換しました。レギオ（軍団）は、30個のマニプルスと補助兵からなる4,000〜5,000名規模の部隊として編成され、騎兵、重装槍兵、重装剣兵、軽装兵、散兵など、多様な兵種が組み込まれました。

共和制初期には、4,000〜5,000名規模の軍団が常備戦力として望ましいとされていましたが、実際には兵力の欠損も頻繁に発生しました。内戦時には、属州民から召集されたアウクシリア（補助兵）が重要な戦力となり、市民兵制から自由志願制への移行が進みました。この改革によって、職業軍人としての性質が強まり、長期の遠征が可能となり、恩賞金や戦利品の分配、退職金制度も整備されました。

帝政期

アウグストゥス帝は、帝政確立後に軍団を再編し、帝国全土に28個の軍団を配置しました。アウクシリアはコホルス単位で運用され、正規軍も軍団単位ではなくコホルス単位で行動するようになり、柔軟な組織運用が可能となりました。ガッリエヌス帝の軍制改革により、騎兵中心の機動戦力であるコミタテンセスが重視され、歩兵部隊は予備戦力として内地に待機するようになりました。コミタテンセスには、本国民や属州民だけでなく、蛮族の傭兵も含まれるようになり、軍の多様性が増しました。指揮権の面でも、王政から共和制、そして帝政へと変化し、最終的には地方司令官ドゥクスが軍を統括するようになりました。ドゥクスは皇帝による任命制となり、彼らは権力を利用して帝位を簒奪し、帝政末期の混乱を招きました。

海軍

ローマ軍は陸軍のイメージが強いですが、海軍も重要な役割を担っていました。紀元前3世紀中頃には海軍官が海賊行為を目的とした海軍を指揮していましたが、第一次ポエニ戦争を機に地中海に強大な海軍を保有する必要性を認識し、東方の同盟国の支援を受けながら海軍の養成を進めました。ヘレニズム式の海軍技術が導入され、大型船舶が活用されました。船長は陸軍の百人隊長に相当する地位が与えられましたが、多くが属州民から編成され、平時においては容易に規模の縮小が可能でした。帝政後期には、ローマ海軍は輸送や補給任務を主な目的としていました。軍船はガレー船で、地中海沿岸に根拠地が置かれ、川舟はライン川やドナウ川沿いの防備に活用されました。

中世

ローマ帝国が崩壊した後、イタリアは群雄割拠の時代に入りました。オドアケル率いるヘルール族がロムルス・アウグストゥルスを退位させた後、東ゴート王国が全土を支配しました。その後、東ローマ帝国のベリサリウス率いるローマ軍によって東ゴート王国が滅ぼされ、ラヴェンナ総督領が成立しました。しかし、ランゴバルト族の侵入によって東ローマ帝国の支配は崩れ、ランゴバルト王国が樹立されました。ラヴェンナ総督領はローマ公国、ナポリ公国、アプリア・カラブリア公国へと分化しました。ランゴバルト王国はフランク王国との戦いで敗退し、滅亡しましたが、南部のランゴバルト領はベネウェント公国として残りました。地中海ではアラブ人の海賊が猛威を振るい、サルデーニャやコルシカが攻め落とされ、シチリア島にはシチリア首長国が打ち立てられました。

フランク王国は北イタリアを征服し、フランク帝国を建国しました。南部ではノルマン騎士ロベール・ギスカールが南部本土を統一し、シチリア王国が成立しました。中部は教皇領として安定を保ちました。フランク帝国の崩壊後、神聖ローマ帝国とローマ教会の対立が激化し、神聖ローマ帝国はイタリア政策として幾度となく遠征を繰り返しましたが、ロンバルディア同盟に対する敗戦などで権威を失いました。北イタリアではジェノヴァやヴェネツィア、フィレンツェなどの共和制国家やミラノ公国などの諸侯が成立し、南部ではトリナクリア王国とナポリ王国が分離しました。中世後期には、百年戦争の影響でイタリアは比較的平穏な時代を過ごしました。

近世

イタリア戦争

近世ルネサンス期、イタリアは五大国によって平和が保たれていましたが、1494年のイタリア戦争によって再び混迷の時代を迎えました。ミラノ公国のルドヴィコ・スフォルツァがフランス王シャルル8世をイタリアに引き込み、ナポリ王国を攻撃させたことがきっかけでした。フランス軍はナポリ王位を奪取しましたが、反フランス同盟が結成され、シャルル8世はイタリアから撤退しました。その後、ルイ12世が再遠征を行い、ミラノ公国を占領しましたが、ナポリ分割を巡ってカスティーリャ＝アラゴン王国と対立し、敗走しました。

カンブレー同盟戦争では、教皇ユリウス2世がフランスやカスティーリャ＝アラゴン、神聖ローマと同盟を結び、ヴェネツィアを攻撃しましたが、陣営が変動し、戦いは複雑化しました。フランス軍は一時的に優勢となりましたが、同盟軍との対立が深まり、再び撤退しました。その後、イタリアはフランスとヴェネツィアによって分割されました。1519年にカール5世が神聖ローマ皇帝に即位すると、ハプスブルク王朝の大帝国が誕生し、フランスとの対立が激化しました。ビコッカの戦いでフランス軍が敗北し、パヴィアの戦いではフランソワ1世が捕虜となりました。コニャック同盟を結んで再戦を試みましたが、ローマ劫掠などによって敗北し、和解しました。その後もイタリアを巡ってフランスとハプスブルク家の戦いが続き、最終的にミラノ公爵領を神聖ローマ皇帝が兼務し、イタリア戦争は終結しました。

近代

イタリア統一と植民地戦争

近代に入り、サルデーニャ王国が北イタリアを統一し、ジュゼッペ・ガリバルディ率いる義勇軍の活躍によって両シチリア王国も滅ぼされ、イタリア王国が成立しました。統一戦争後、イタリア王国は植民地戦争に乗り出し、エチオピア帝国を攻撃しましたが、第一次エチオピア戦争で敗北しました。伊土戦争ではオスマン帝国から北アフリカの領土を割譲させ、リビアを植民地としました。

第一次世界大戦

イタリア王国は当初、ドイツ帝国やオーストリア＝ハンガリー帝国と同盟関係にありましたが、未回収地の返還を巡ってオーストリアと対立し、協商国側で参戦しました。ロンドン条約で未回収地の返還を約束されたイタリアは、アルプス山脈での山岳戦を強いられ、多くの犠牲者を出しながらもオーストリア軍を撃破しました。戦後、南チロルとイストリア半島を獲得しましたが、ダルマティアの獲得はできませんでした。

戦間期

第一次世界大戦後、イタリアは経済不安に陥り、ファシスト党が政権を握りました。ムッソリーニは軍の重視を掲げ、第二次エチオピア戦争やスペイン内戦に介入しました。アルバニアを武力併合した後、第二次世界大戦に参戦しました。

第二次世界大戦

イタリア王国軍は、物資不足や装備の旧式化が深刻な状況にありました。特に陸軍の戦車は第一次世界大戦時代のものが主力で、海軍も航空母艦を保有していませんでした。1940年6月10日に英仏に宣戦布告しましたが、準備不足から消極的な戦闘を強いられました。アフリカ戦線ではドイツ軍の支援を受けながらも、連合軍に敗北を重ねました。ギリシャにも侵攻しましたが、装備不足と兵站の問題から苦戦を強いられました。独ソ戦にはイタリア軍も派遣されましたが、壊滅的な損害を被りました。1943年、ムッソリーニが解任されると、イタリア王国は連合国との単独講和に応じましたが、北部にはムッソリーニが樹立したイタリア社会共和国が成立し、内戦状態に陥りました。最終的にイタリアは連合軍に降伏し、第二次世界大戦は終結しました。

現代

パリ講和条約と再軍備

第二次世界大戦後、イタリアはパリ講和条約で軍備制限を受けましたが、再軍備を開始し、北大西洋条約機構（NATO）に加盟しました。アメリカの支援を受けながら軍備を増強し、1980年代には西欧を代表する国防戦力となりました。1985年には軽空母「ジュゼッペ・ガリバルディ」を竣工させました。

レバノン出兵

1982年、レバノン内戦が勃発すると、イタリアは停戦監視団を派遣し、国際貢献活動を開始しました。

対テロ戦争

2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、イタリアは国際治安支援部隊（ISAF）に参加し、アフガニスタンの治安維持活動を行っています。イラク戦争には参加を見送りましたが、戦後には治安維持部隊を派遣しました。

脚注

注釈

[この部分には、本文中に出典や注釈を必要とする項目に対する補足説明を記述します。]

出典

[本文中で参照した資料や参考文献のリストを記述します。]

参考文献

[参考文献リストを記載します]
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外部リンク

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Timeline of Italian history（アーカイブ）

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