吉祥寺 (文京区)

吉祥寺（きちじょうじ）

吉祥寺は、東京都文京区本駒込に位置する曹洞宗の寺院です。山号を諏訪山と称し、静寂な雰囲気を漂わせています。この寺院は、群馬県の永源寺を本寺とし、神奈川県の最乗寺の系列に属しています。

歴史

吉祥寺の歴史は、室町時代の1458年（長禄2年）にまで遡ります。江戸城を築城した太田道灌が、青巌周陽を開山として招き、創建しました。道灌は、江戸城の建設中に「吉祥」と刻まれた金印を発見し、これを吉兆として寺を建立したとされています。この寺の山号は、かつてこの地が諏訪神社の社地であったことに由来します。

戦国時代には、古河公方足利義氏の母であり、北条氏綱の娘でもある芳春院の位牌が安置されていました。その後、徳川家康の関東入府に伴い、吉祥寺は駿河台に移転。しかし、明暦の大火や江戸大火に見舞われ、現在の駒込の地に移されました。

境内

旃檀林学寮

江戸時代、吉祥寺の境内には、後に駒澤大学となる学寮「旃檀林」が設けられました。卍山道白が規則を制定し、仏教と漢学の研究拠点として大いに栄えました。最盛期には1000人以上の学僧が在籍し、幕府の学問所である「昌平黌」と並び称されるほどでした。

学寮では、学徳を兼ね備えた者が寮主となり、役員を選出して学問の指導や日常生活を運営していました。教科は仏教の教えである内典と、漢学を学ぶ外典があり、江戸中期以降は特に漢学が重視されました。そのため、僧侶だけでなく、寺院に関わりのある旗本の子弟や寺侍も聴講していました。

吉祥寺は、かつて七堂伽藍を誇っていましたが、東京大空襲で焼失し、山門と経蔵を残すのみとなりました。現在は復興が進み、本堂、客殿、庫裏などが再建されています。

墓所

吉祥寺は、譜代大名や旗本の菩提寺であったため、多くの著名人の墓があります。松前氏広のように、本来は国許の菩提寺に埋葬されるはずの人物も、諸事情によりこの寺に葬られています。しかし、無縁状態の墓所も多く、今後整理される可能性があります。

関東大震災後、墓石の整理によって、大名や旗本の古い墓石の多くが打ち捨てられました。その後、日蓮宗系の宗教家によって、これらの墓石は稲城市のありがた山に移されました。

墓所に眠る人々

吉祥寺には、以下のような様々な身分の人々が眠っています。

麻生藩主新庄氏歴代
新発田藩主溝口氏 - 伯爵溝口直正
壬生藩主鳥居氏
七日市藩主前田氏 - 特に前田利尚の墓は目立つ
福江藩主五島氏 - 合葬
山上藩主稲垣氏
高島藩主諏訪氏
松前藩主松前氏
備中松山藩主板倉氏 - 板倉勝静
備中松山藩江戸学問所督学 - 川田甕江
金沢藩主前田家分家 男爵前田利武
柳川藩二代藩主田中忠政
山形藩二代藩主鳥居忠恒
谷村藩初代藩主鳥居成次
高家大沢氏 - 大沢基寿
旗本成瀬氏 - 成瀬正武
旗本屋代氏 - 屋代忠正
旗本松前氏 - 二家の墓所がある。
旗本甲斐庄氏 - 楠木正成の末裔。三家の墓所がある。
旗本横田溝口家 - 新発田藩分家
旗本富江五島家 - 福江藩分家
旗本鳥居氏 - 鳥居耀蔵
旗本川窪氏
旗本真田氏
旗本岡部氏
旗本大草氏
旗本水野氏
旗本丹羽氏 - 丹羽長守
薩摩藩重臣 島津久敏（垂水領主）と町田久幸（石谷領主）
八百屋お七・吉三郎の比翼塚
鳥山新三郎 - 幕末の儒者。
榎本武揚
林洞海 - 蘭方医
菱田房明
板倉勝宣 - 登山家
二宮尊徳の墓碑
高辻修長 - 公家高辻家、子爵、宮中顧問官
西郷吉義
堤正誼
平岡通義
安場保和
土方寧
三田昇馬 - 貴族院勅選議員
大野誠 (長野県令)
吉武栄之進
津田静枝
林吾一
伊藤藍田
細谷安太郎
佐藤進 (軍医)
赤松則良 - 森鷗外と離縁した長女・登志子も生家・赤松家の墓に葬られている。
鹿島守之助
岡村輝彦
鳥谷部春汀
尾越辰雄
坂本嘉治馬
今外三郎 - ジャーナリスト。
小池国三 - 甲州財閥'>[実業家]
金須松三郎 - 仙台の豪商
川上眉山（小説家）
武村耕靄(武村千佐子) - 画家
中根半嶺 - 医師、書家
鈴木魯 - 福井藩士、書家、藩校明道館訓導
甲斐庄楠香 - 高砂香料工業創業者
西郷孤月（日本画家）
渋谷正吉 - 気象観測家
池田是淵 - 松前藩士、歴史学者
二木保幾（経済学者、早稲田大学教授）
梅津小次郎 - 日本大学医学部教授
山県鉄蔵 - 東京市神田区長
佐々木良作 - 政治家
町村金五 - 政治家
町村信孝 - 政治家
清水かつら - 童謡詩人

文化財

吉祥寺には、以下の文化財があります。

重要文化財

絹本著色翠竹図 顧安筆（元代）
刀 無銘 伝 国行

文京区指定有形文化財

経蔵

交通アクセス

吉祥寺へは、東京メトロ南北線 本駒込駅から徒歩5分でアクセスできます。

その他

武蔵野市にある吉祥寺の地名は、明暦の大火で吉祥寺の門前町の住民が住居を失い、現在の武蔵野市に移住し、開墾したことに由来します。

関連文献

『吉祥寺小史』（吉祥寺教化部、1940年）
『吉祥寺史』（岩本勝俊著、1953年）
斎藤長秋 編「卷之五 玉衡之部 諏訪山吉祥寺」『江戸名所図会』 3巻、有朋堂書店〈有朋堂文庫〉、1927年、293-295頁。

外部リンク

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