妖怪百物語

映画『妖怪百物語』の詳細解説

『妖怪百物語』は、1968年3月20日に公開された大映京都撮影所製作の時代劇・特撮映画です。『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』との併映で、カラー、シネマスコープ、79分という構成でした。

あらすじ

物語は、豪商・但馬屋利右衛門が、寺社奉行の堀田豊前守や町内の権力者たちと結託し、貧しい人々が暮らす長屋を無理やり取り壊して岡場所を作ろうと企むところから始まります。その余興として、百物語の会を催しますが、これは怪談を一つ語り終えるごとに灯りを一つずつ消していくもので、最後の灯りが消えた時に妖怪が現れるとされていました。

しかし、利右衛門は百物語が終わっても憑き物落としの呪いをせず、客に小判を渡して帰してしまいます。すると、怪異が次々と発生。帰路についた客たちは「置いてけ堀」の不気味な声に脅され、小判を堀の中に吸い込まれてしまいます。

一方、堀田豊前守は百物語の会に潜り込んでいた若い浪人を警戒。また、但馬屋は長屋の取り壊しに反対する住民を弾圧し、強引に工事を始めます。その結果、長屋の敷地に祀られていた古い社も壊され、たちまち怪異が起こります。妖怪が出現し、但馬屋の手代は逃げ帰りますが、利右衛門は妖怪に遭遇し、錯乱して手代と刺し違えて死んでしまいます。

さらに、堀田豊前守の屋敷にも多数の妖怪が現れ、正気を失います。そこに現れたのは、実は奉行の不正を暴く隠密だった若い浪人。その姿を見た奉行は正気を取り戻し、腹を切って果てます。妖怪たちはその後、深夜の町を百鬼夜行を行い、夜明けと共に消えていきました。

概要

本作は、『妖怪大戦争』、『東海道お化け道中』と並び、「大映京都の妖怪三部作」として知られています。1968年当時、テレビで放映されていた『ゲゲゲの鬼太郎（第1作）』の影響で、子供たちの間で妖怪ブームが起こっていた中、春休み興行として公開され、観客の反応は非常に良好でした。この成功を受けて、大映は同年暮れの冬休み興行に次回作『妖怪大戦争』を公開し、シリーズ化へと繋げました。

特筆すべきは、京都と東京の撮影所による「特撮映画二本立て」という豪華な興行スタイルです。これは当時、円谷英二が特撮を担当していた東宝でも実現できなかったもので、1966年の『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』と『大魔神』以来の組み合わせでした。

本作で取り上げられた「百物語」は、江戸時代の落語家・初代林家正蔵が盛んにしたとされており、劇中では八代目林家正蔵（後の林家彦六）が初代林家正蔵役を演じています。物語は怪談仕立ての時代劇ですが、コミカルなアニメーションとの合成シーンも盛り込まれ、ドラマに緩急がつけられています。

スタッフ

企画：八尋大和
脚本：吉田哲郎
撮影：竹村康和
撮影助手：田中省三
録音：大角正夫
照明：伊藤貞一
照明助手：美間博
美術：西岡善信
美術助手：加藤茂
音楽：渡辺宙明
編集：菅沼完二
音響効果：倉嶋暢
擬斗：楠本栄一
助監督：太田昭和
製作主任：西沢鋭治
現像：東洋現像所
監督：安田公義
特撮監督：黒田義之
スチル：小山田輝男
撮影（特撮）：森田富士郎
妖怪造型：八木正夫、エキスプロダクション
アニメーション：ピー・プロダクション

キャスト

大木安太郎：藤巻潤
おきく：高田美和
太吉：平泉征
お仙：坪内ミキ子
新吉：ルーキー新一
初代林家正蔵：八代目林家正蔵
但馬屋利右衛門：神田隆
堀田豊前守：五味龍太郎
重助：吉田義夫
藤兵衛：水原浩一
おりく：小倉康子
伍平：浜村純
茨木伴内：杉山昌三九
甚兵衛：花布辰男
浪人一：伊達三郎
浪人二：山本一郎
町年寄：南部彰三
老僧：荒木忍
名主：玉置一恵
お寅：近江輝子
大首：小柳圭子
浪人の妻：毛利郁子
語り手：内藤武敏

登場妖怪

本作に登場する妖怪たちは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』などを参考に、水木しげるが描いた妖怪画を元に、八木正夫率いるエキスプロダクションが造型しました。一部には、『赤胴鈴之助』シリーズの造形物を改造流用したものもあり、水木しげるの描く妖怪や伝承とは異なる風貌になったものも存在します。

主な妖怪として、以下のようなものが登場します。

置行堀（おいてけ掘）: 本所七不思議の一つ。
人魂
化け提灯: 普通の提灯が変化した妖怪。
河童: 次作『妖怪大戦争』とは異なる造型。
うしおに: 長い鬣と尾を持つ三つ目の獣のような妖怪。
ひょうすべ: 子役が演じた。
一つ目小僧: 子役が演じた。
油すまし: 子役が演じ、一声かけると全ての妖怪が消える。
ぬっぺっぽう: 子役が演じた。
ぬらりひょん: 子役が演じた。
火吹き婆: 化け猫の妖怪。
青坊主: 『赤胴鈴之助』に登場した山犬神の面を改造したもの。
烏天狗: 『赤胴鈴之助』に登場した鳥人の被り物を改造したもの。
泥田坊
うまおに: 地獄の獄卒。
般若
とんずら: 『百鬼夜行絵巻』に登場する妖怪。
陰摩羅鬼: 地獄の獄卒。
毛女郎
土転び: ぬいぐるみの中に3人の演者が入って動かした。
のっぺらぼう: 顔のない妖怪。
一角大王: 妖怪の近習頭。
白粉婆: 甚兵衛殺害現場の掘割に現れる。
おとろし
ろくろ首: ブラックシアター方式で撮影。
一本足の傘（からかさ）: ピアノ線による人形操演で表現。
狂骨: 人形操演で表現された。
大首: ブルーバックで合成された。
姥ヶ火: 頭だけの作り物。
やまびこ

これらの妖怪たちは、クライマックスシーンである百鬼夜行で大挙して登場し、映画を盛り上げました。

雑誌掲載と漫画化

本作公開時には、複数の少年雑誌で特集が組まれました。

『週刊少年キング』では、水木しげるによる漫画『妖怪百物語』が連載されました。
『週刊少年マガジン』では、表紙にうしおにが描かれた特集が掲載されました。
『まんが王』では、妖怪図鑑が付録となった特集が組まれました。

水木しげるによる漫画版は、映画に忠実な絵柄で描かれており、映画館では小冊子として販売されました。

商品化

公開当時、様々な関連商品が発売されました。

ショウワノートからは、ノート、スケッチブック、ぬりえ本が発売されました。
丸昌からは、プロマイド（ブロマイド）が発売されました。
ニットーからは、「からかさ」、「油すまし」などのソフビ人形が発売されました。
ニットーからは、プラモデルが発売されました。

映像ソフト

本作は、LD-BOX、DVD、デアゴスティーニのDVDコレクションとして映像ソフト化されています。

脚注

注釈、出典、参考文献は省略

関連項目

妖怪シリーズ（大映京都妖怪三部作）
大魔神
本所七不思議
林家正蔵

外部リンク

妖怪百物語 - allcinema
* 妖怪百物語 - KINENOTE



以上が映画『妖怪百物語』の詳細な解説です。この映画は、当時の妖怪ブームを牽引しただけでなく、特撮技術や時代劇と怪談の融合など、様々な面で高い評価を受けている作品です。

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