日本の哺乳類一覧

日本の哺乳類一覧

日本列島は、アジア大陸に隣接する島嶼であり、その地理的特性から多様かつ独特な哺乳類相を育んできました。氷期に大陸から移入した生物が孤立し、独自の進化を遂げた固有種や亜種が多く存在します。南北に3,000kmを超える長さと、3,000m級の高山地帯を持つことから、亜寒帯から亜熱帯まで多様な環境を含み、哺乳類の多様性を支えています。

日本の哺乳類相の特徴

日本に生息する陸生哺乳類は約130種にのぼり、そのうち3割以上が固有種、7属が固有属という特異な構成を見せています。一方で、北海道や対馬などユーラシア大陸に近い地域では、固有種に加えて大陸系の種も生息しています。哺乳類相は、北海道と本州を隔てるブラキストン線、トカラ列島と奄美群島の間にある渡瀬線によって区切られ、それぞれの地域で異なる動物群が確認されています。

動物地理学的には、渡瀬線以北に分布する旧北区系の動物群と、以南に分布する東南アジアを起源とする東洋区系の動物群の2つに大別されます。本稿では、竹島や尖閣諸島など領有権争いのある地域にのみ生息する種も日本固有種として扱います。

哺乳類の種類

以下に、日本に生息する哺乳類の一部を科ごとにご紹介します。

真無盲腸目

トガリネズミ科
チビトガリネズミ：世界最小の哺乳類のひとつ。
アズミトガリネズミ：本州固有種で、準絶滅危惧種。
カワネズミ：九州地方の個体群は絶滅のおそれあり。
ワタセジネズミ：中琉球の固有種で、準絶滅危惧種。
オリイジネズミ：奄美群島の固有種で、絶滅危惧IB類。

モグラ科
ヒメヒミズ：本州固有種。
ミズラモグラ：本州固有種で、準絶滅危惧種。
センカクモグラ：尖閣諸島の固有種で、絶滅危惧IA類。

コウモリ目

オオコウモリ科
エラブオオコウモリ：絶滅危惧IA類で、天然記念物。
オガサワラオオコウモリ：小笠原諸島の固有種で、絶滅危惧IB類、希少種、天然記念物。
オキナワオオコウモリ：絶滅種。

キクガシラコウモリ科
コキクガシラコウモリ
オリイコキクガシラコウモリ：絶滅危惧IB類で、固有種、希少種。
ミヤココキクガシラコウモリ：絶滅種。
ヤエヤマコキクガシラコウモリ：絶滅危惧II類。

サル目

オナガザル科
ニホンザル：本州の個体群は絶滅のおそれのある地域個体群。
ヤクシマザル

ウサギ目

ナキウサギ科
エゾナキウサギ：準絶滅危惧種。

ウサギ科
ニホンノウサギ
アマミノクロウサギ：絶滅危惧IB類、固有種、希少種、特別天然記念物。

ネズミ目

リス科
エゾリス
ニホンリス：中国地方、九州地方では絶滅寸前。
エゾモモンガ
ニホンモモンガ
ムササビ

ヤマネ科

ヤマネ：天然記念物。

ネズミ科
ミカドネズミ
エゾヤチネズミ
ヤチネズミ
スミスネズミ
ハタネズミ
アカネズミ
ヒメネズミ
カヤネズミ
ハツカネズミ
オキナワハツカネズミ
オキナワトゲネズミ：絶滅危惧IA類、固有種、希少種。「トゲネズミ」として天然記念物。
アマミトゲネズミ：絶滅危惧IB類、固有種、希少種。「トゲネズミ」として天然記念物。
トクノシマトゲネズミ：絶滅危惧IB類、固有種、希少種。「トゲネズミ」として天然記念物。
ケナガネズミ：絶滅危惧IB類、固有種、希少種、天然記念物
クマネズミ
ドブネズミ
ナンヨウネズミ

ネコ目

クマ科
ヒグマ：石狩西部、天塩・増毛地方の個体群は絶滅のおそれのある地域個体群。
ツキノワグマ：下北半島、紀伊半島、東中国地域、西中国地域、四国山地の個体群は絶滅のおそれのある地域個体群。四国・九州では絶滅または絶滅寸前。

イヌ科
タヌキ
キツネ
オオカミ

イタチ科
テン
イタチ
イイズナ
オコジョ
アナグマ
カワウソ：絶滅種。

ネコ科
イリオモテヤマネコ：絶滅危惧IA類、固有種、希少種、特別天然記念物。
ツシマヤマネコ：絶滅危惧IA類、希少種、天然記念物。

クジラ偶蹄目

シカ科
ニホンジカ
ケラマジカ
ツシマジカ
ヤクシカ
マゲジカ：環境省第4次レッドリストでは「馬毛島のニホンジカ」として絶滅のおそれのある地域個体群。

ウシ科
ニホンカモシカ：九州地方の個体群は絶滅のおそれのある地域個体群、特別天然記念物

ジュゴン科
ジュゴン：絶滅危惧IA類、南西諸島の浅海に分布。極めて絶滅が心配されている。

外来種の影響

近年、アライグマやタイワンリス、ヌートリアなどの外来種が侵入し、生態系に深刻な影響を与えています。これらの外来種は、在来種を捕食したり、生息地を奪ったり、農作物に被害を与えたりするなど、様々な問題を引き起こしています。また、イエネコ（ノネコ）は南西諸島などで固有種を含む多くの在来小動物を捕食し、ヤマネコ類への病気伝播も懸念されています。

保全の取り組み

日本の哺乳類相を守るため、環境省をはじめとする関係機関が様々な保全活動に取り組んでいます。生息地の保護、外来種の駆除、個体数のモニタリングなど、多岐にわたる対策が進められています。

参考文献

阿部永ら著・財団法人自然環境研究センター編 『日本の哺乳類【改訂版】』東海大学出版会、2005年、ISBN 4-486016-90-4
環境省自然環境局野生生物課編『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物1 哺乳類』 財団法人自然環境研究センター、2002年、ISBN 4-915959-73-2
土肥昭夫ほか『哺乳類の生態学』東京大学出版会、1997年1月。ISBN 4-13-060167-9。
Ohdachi, Satoshi; Ishibashi, Yasuyuki; Iwasa, Masahiro et al., eds. The Wild Mammals of Japan. Shoukadoh. Kyoto. ISBN 4879746266

関連項目

哺乳類
日本哺乳類学会

外部リンク

日本哺乳類学会によるレッドリスト(1997年)
生物多様性情報システム
哺乳類 概説
* 種の多様性調査（動物分布調査）対象種一覧

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