2017年の鉄道

2017年の鉄道界

2017年は日本の鉄道にとって、国鉄・JR発足30周年、日本の地下鉄開業90周年など、歴史的な節目が重なった記念すべき年となりました。新たな豪華列車や新型車両が登場し、サービス向上やネットワーク拡大も進んだ一方、自然災害による大規模な被害、新幹線における重大インシデント、さらには事件や不祥事も発生し、鉄道の安全と安定輸送の重要性が改めて浮き彫りになった一年でもありました。国内外の様々な出来事を通して、2017年の鉄道界を振り返ります。

新規開業・延伸と駅の動き

この年は、国内外で多くの鉄道インフラの進展がありました。
国内では、JR西日本の可部線の一部区間（可部駅 - あき亀山駅間）が、2003年の廃止から14年ぶりに電化路線として復活開業したことが特筆されます。この復活は、廃線跡を活用した稀有な事例として注目を集めました。また、JR西日本（寺家駅）、三陸鉄道（十府ヶ浦海岸駅）、秩父鉄道（ソシオ流通センター駅）、JR東日本（八幡大橋（東陵高校）駅、郡山富田駅、まちなか陸前高田駅、気仙沼市立病院駅）などで新駅が開業し、利便性の向上が図られました。一方、JR北海道では利用者の減少などにより複数の駅（稲士別駅、五十石駅、東山駅、姫川駅、桂川駅、蕨岱駅、北豊津駅、美々駅、島ノ下駅、上厚内駅）が廃止または信号場化されています。西武鉄道安比奈線（南大塚駅 - 安比奈駅間）は、2016年に正式廃止されましたが、この年に施設が撤去されました。
海外に目を向けると、ニューヨーク市交通局のIND2番街線（63丁目駅 - 96丁目駅）が部分開業。台湾では、台湾高速鉄道が開業10周年を迎え、交通の要衝としての役割を確固たるものにしました。また、中国各地での地下鉄網の拡大は目覚ましく、福州、鄭州、南京、ハルビン、成都、大連、石家荘、長春、南昌、昆明、青島、武漢、合肥、広州、南寧、重慶、貴陽、北京、上海、廈門といった多くの都市で新たな路線や延伸区間が運行を開始し、都市交通の利便性が大幅に向上しました。この他、韓国（釜山都市鉄道、首都圏電鉄、ソウル軽電鉄牛耳新設線）、タイ（バンコク・スカイトレイン）、フランス（LGV南ヨーロッパ大西洋線など）、ロシア（バクー・トビリシ・カルス鉄道）、インドネシア（スカルノ・ハッタ空港連絡鉄道）など、世界各地で鉄道ネットワークの拡張が進められました。

車両・運行とサービス

車両面では、特別な列車が相次いでデビューしました。JR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」とJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」という、日本の豊かな自然や文化を巡る豪華クルーズトレインが運行を開始し、新たな旅のスタイルを提案しました。東武鉄道では、かつて東北各地で活躍したSLが復活し、観光列車「大樹」として運行を開始したほか、分割・併合が可能な新型特急車両500系「リバティ」が登場しました。これらの新型特急導入に伴い、ダイヤ改正では快速・区間快速が廃止されるなど、東武の運行体系に大きな変化がありました。
また、座席指定サービスの拡充も進みました。西武鉄道では池袋線・西武有楽町線・東京メトロ有楽町線・副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線に直通する有料座席指定列車「S-TRAIN」が登場。京阪電気鉄道は特急列車に快適性を追求した指定席車両「プレミアムカー」を導入し、平日朝には全席指定の通勤ライナー「ライナー」を新設しました。京急電鉄も「京急ウィング号」「モーニング・ウィング号」を座席指定化しています。
新型車両としては、JR東日本のE353系（中央本線特急用）、相模鉄道20000系、京王電鉄5000系（2代目）、東武鉄道70000系、信楽高原鐵道SKR500形などが登場し、既存車両の置き換えやサービス向上に貢献しました。一方で、大阪環状線で長年「オレンジの電車」として親しまれた103系、東京メトロ銀座線の01系、JR東日本の寝台特急電車583系など、多くのファンに惜しまれつつ引退した車両もあり、鉄道車両の世代交代が進みました。
ダイヤ改正は、JRグループが3月4日に全国規模で実施したほか、多くの私鉄・地下鉄でも実施され、列車の増発や運転パターンの変更が行われました。特にJRグループでは、JR北海道で特急列車再編に伴う複雑な特急料金通算特例が設定されたり、JR九州で特急「かわせみ やませみ」が新設されるなど、地域ごとの変化が見られました。

制度・ICカード

鉄道サービスの根幹に関わる制度や決済システムにも動きがありました。日本の多くの都市部で普及している交通系ICカードは、この年も利用可能エリアが拡大しました。JR東日本ではSuicaの対応エリアを中央本線（韮崎駅 - 松本駅間）や信越本線の一部に拡大しフルサービス化されました。JR西日本ではICOCAが北陸本線・IRいしかわ鉄道線・あいの風とやま鉄道線の大聖寺駅 - 倶利伽羅駅間（石川・富山県境を跨いでの利用も可能に）や城端線、紀勢本線の一部区間に導入されました。
最も注目されたのは、東海道・山陽新幹線（東京駅 - 博多駅間）で交通系ICカードを利用して乗車できる「スマートEX」が9月30日に導入されたことです。これにより、手持ちの交通系ICカードを登録するだけで、予約・決済した新幹線にチケットレスで乗車できるようになり、新幹線の利用方法が多様化しました。ただし、これはSF残高での利用ではなく、登録したクレジットカードでの決済となります。台湾では、桃園捷運や台北捷運で複数の交通系ICカードの相互利用が進みました。日本では、スルッとKANSAIのSFカードが販売終了（利用終了は翌年）となるなど、カードシステムにも変化が見られました。JR九州では、指定席特急券の閑散期が廃止され、通年で同一料金となりました。国内大手私鉄では、西日本鉄道、福井鉄道、えちぜん鉄道で駅ナンバリングが導入され、全線全駅での導入が完了しました。

災害・事故・事件

2017年は、自然災害による鉄道への影響が特に大きい年となりました。7月の平成29年7月九州北部豪雨では、JR九州の久大本線や日田彦山線などで橋梁流失や路盤流出、土砂流入といった壊滅的な被害が発生し、長期の不通を余儀なくされました。10月の台風21号も、西日本を中心に大きな爪痕を残し、JR西日本関西本線、南海電鉄南海本線（男里川橋梁陥没）や高野線、京都丹後鉄道など、広範囲の路線で運休や不通が発生しました。これらの災害からの復旧には長い時間を要することとなりました。
事故としては、紀州鉄道やわたらせ渓谷鐵道で脱線事故が発生しています。また、東海道本線西岡崎駅付近で陥没事故が発生し、運行に影響が出ました。しかし、最も鉄道業界に衝撃を与えたのは、12月に発生した東海道・山陽新幹線のぞみ号の台車亀裂問題です。この事象は、新幹線として初めて国の運輸安全委員会により重大インシデントに認定され、日本の新幹線の安全性神話が揺らぐ事態となり、その原因究明と再発防止が急務となりました。
事件としては、4月にロシアのサンクトペテルブルク地下鉄で自爆テロが発生し、多数の死傷者が出ました。国内では、新幹線車内での放火未遂事件が発生。また、有名タレントによる線路内への無許可立ち入りが問題となり、書類送検される事例もありました。鉄道会社内部の不祥事としては、運転士による不正乗車や居眠りといった事例が報じられています。年末には、リニア中央新幹線建設工事の入札を巡り、大手建設会社による不正が行われていた疑いが浮上し、東京地検特捜部による捜査が行われるという、鉄道業界の根幹に関わる事件が発生しました。

周年と受賞、その他の出来事

2017年は、日本の鉄道にとって記念すべき年が続きました。3月31日には日本国有鉄道が分割民営化されて終焉を迎えてからちょうど30年、翌4月1日にはJR旅客各社および貨物会社が発足して30周年を迎えました。また、7月には日本の公営地下鉄において新規開業都市がないまま30年を迎えた仙台市地下鉄が開業30周年を迎え、信楽高原鐵道も西日本旅客鉄道から転換開業して30周年となりました。さらに、11月には名古屋市営地下鉄が開業60周年、12月には日本の地下鉄が開業してから90周年、小田急電鉄が開業90周年といった大きな節目を迎え、各地で記念イベントや企画が行われました。
鉄道に関する栄誉としては、JR九州のBEC819系電車がブルーリボン賞を、JR東日本E235系電車、えちごトキめき鉄道ET122形1000番台、静岡鉄道A3000形電車がローレル賞を受賞しました。グッドデザイン賞では、「TRAIN SUITE 四季島」（金賞）、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」、東武鉄道70000系、京王電鉄5000系、西武鉄道40000系といった、デザイン性に優れた新型車両や豪華列車が多く選定されました。日本鉄道賞では、東京メトロが「日本の地下鉄誕生より90年」で大賞を受賞し、日本の地下鉄が長年培ってきた歴史と技術が高く評価されました。歴史的な遺産としては、日本イコモス国内委員会により日本の20世紀遺産が選定され、瀬戸大橋、青函トンネル、東海道新幹線、肥薩線といった鉄道関連施設が認定されました。
その他の出来事としては、ソウルメトロとソウル特別市都市鉄道公社が統合し、「ソウル交通公社」として新たなスタートを切ったことや、世界的な鉄道車両メーカーであるフランスのアルストムとドイツのシーメンスが鉄道事業の統合を発表したことなど、鉄道業界の再編に向けた動きも見られました。

まとめ

2017年の鉄道界は、国内外における新規路線の開業や延伸によるネットワークの拡大、豪華列車や新型車両の登場によるサービスの多様化、ICカードの利用範囲拡大など、未来に向けた明るい進展が多く見られた一年でした。一方で、頻発する自然災害によるインフラへの甚大な被害、新幹線の安全神話をも揺るがした重大インシデント、そして事件や不祥事といった負の側面も同時に露呈しました。これらの出来事は、鉄道が社会インフラとして常に安全で安定した輸送を提供することの難しさと重要性を改めて私たちに問いかけるものでした。2017年は、鉄道の進化と課題が同時に浮き彫りになった、記憶に残る一年と言えるでしょう。

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