シチジル酸（CMP）は、リン酸、リボース、シトシンが結合した有機化合物。RNAの主要な構成要素であり、特に5'-体は食品添加物として栄養強化に用いられ、母乳に含まれる成分として乳児の発育促進や免疫向上に寄与するため、粉ミルクにも広く添加されています。
グアノシンは、プリン塩基グアニンと糖リボースが結合したヌクレオシドです。リン酸化されGMP, GDP, GTP, cGMPとなり、エネルギー代謝やシグナル伝達など細胞機能に不可欠な役割を果たします。デオキシリボースを持つデオキシグアノシンはDNAの構成要素です。
グアニル酸（GMP）は、RNAを構成するヌクレオチドで、グアノシン一リン酸とも呼ばれます。グアニン、リボース、リン酸から成り、特に5'-GMPはキノコのうま味成分として、また核酸系調味料として食品産業で広く利用される重要な分子です。
キサンチル酸は、キサンチンという核酸塩基、リボース糖、そしてリン酸が結合してできるヌクレオチドの一種です。キサントシン一リン酸とも称され、特に5'-位にリン酸が結合した形態は、呈味性ヌクレオチドとして食品のうま味に関与します。
カルバモイルリン酸は、生体内で重要な役割を果たすアニオン。尿素回路における過剰な窒素の体外排出や、DNA・RNAの構成要素であるピリミジンの合成に不可欠な中間体。特定の酵素により合成される。
オロト酸は、乳清から発見された複素芳香環化合物で、ピリミジン塩基の生合成における重要な中間体です。かつてはビタミンB13とも呼ばれましたが、多くの高等動物は生合成可能です。代謝異常はオロト酸尿症の原因となります。
ウリジン二リン酸（UDP）は、生体内で重要な役割を担うヌクレオチドの一種です。核酸塩基のウラシル、五炭糖のリボース、そしてピロリン酸基が結合して構成されており、ウリジンヌクレオシドのピロリン酸エステルにあたります。
ウリジン三リン酸（UTP）は、RNA合成の主要な材料であり、リボース、ウラシル、三リン酸からなるピリミジンヌクレオチドです。また、糖代謝や解毒などの重要な生化学反応において、特異的なエネルギー源や活性化分子としても機能する、生命活動に不可欠な分子です。
ウリジル酸（UMP）は、ウラシル、リボース、リン酸からなる重要なヌクレオチドです。RNAの主要構成成分であり、ピリミジンヌクレオチド合成の中心的な中間体として生体内で機能します。食品分野では、そのナトリウム塩がうま味調味料としても広く利用されています。
5-メチルウリジン三リン酸は、生命活動を支える重要なヌクレオシド三リン酸の一つです。構造的にはチミジンのリボヌクレオシド三リン酸に相当しますが、慣習によりチミジン三リン酸がデオキシ体を指すため、区別のためにこの名称が用いられます。
5-メチルウリジンは、メチル基が付加されたヌクレオシドであり、ribosylthymineやribothymidineとも称される。生体内のtRNAにごく少量存在する微量成分で、そのデオキシリボース体はチミジンにあたる。核酸命名法では略号「T」がこれを表す場合がある。
プリン代謝経路における重要な中間体の一つであり、アデニンやグアニンといった生命活動に不可欠なプリンヌクレオチドが新たに合成される際に、ホルミル化の段階で現れる化合物、5-ホルムアミドイミダゾール-4-カルボキサミドリボチド（FAICAR）について解説します。
5-ヒドロキシイソ尿酸は、化学式C5H4N4O4、分子量184.110 g/molを持つ化合物です。尿酸オキシダーゼによる尿酸の酸化反応で生成し、比較的速やかにアラントインと二酸化炭素へ自発的に分解する性質を持つ不安定な中間体です。
4,5-ジヒドロオロト酸は、生命活動に必須のピリミジンヌクレオチドを生合成する代謝経路において、重要な中間段階に位置する化合物です。特に、オロト酸が生成される直前の段階で現れます。
3-アミノイソ酪酸(BAIBA)はチミン異化産物。運動で筋肉から分泌が増え、血中を循環。白色脂肪組織に働きかけ褐色化を促し、基礎代謝向上や脂肪燃焼、脂質・糖代謝調節への関与が注目される生理活性物質。
プリン体とは、プリン骨格を持つ生体物質の総称であり、核酸を構成するアデニンやグアニンなどが含まれます。エネルギー代謝や遺伝情報に関わる重要な分子であり、生体内での合成・分解のバランスは健康維持に不可欠です。また、食品中にも存在し、特に尿酸代謝との関連から注目されています。
核酸（DNAやRNA）を構成する主要な塩基の一つで、ピリミジン環を骨格に持つ化合物の総称です。チミン、シトシン、ウラシルなどが含まれ、遺伝情報の維持や転写に不可欠な役割を担います。紫外線により二量体を形成し、遺伝子損傷の原因となることがあります。
化学分野におけるアナログとは、特定の化合物と構造や機能が類似しながらも、構成の一部が異なる化合物のことです。医薬品開発におけるリード化合物の誘導体や、酵素反応の研究に用いられる遷移状態アナログなどがあります。
ゆらぎ塩基対は、RNA構造に見られる非標準的なペアで、ワトソン＝クリック型と同程度の安定性を持つ。タンパク質合成においてコドンとアンチコドンの対応に柔軟性をもたらし、効率的な翻訳を可能にする。
大員環化合物は、10個以上の原子からなる大きな環状構造を持つ有機化合物の総称です。ポルフィリンやマクロライドなどが代表的で、金属イオンと結合し、生体内で重要な機能を持つものが多いです。
動物的な単細胞生物であり、全身や体の一部に生えた繊毛を運動や摂食に用いる微生物の総称です。ゾウリムシやラッパムシなどが含まれます。かつては原生動物に分類されましたが、現在は独立した門として扱われることが多い多様なグループです。
和歌山県海草郡に存在した紀三井寺町は、旧名草郡に位置し、1889年に紀三井寺村として成立。1935年に町制を施行しましたが、1940年には和歌山市に編入され、短命に終わった自治体です。
和歌山県海南市に位置する「日方（ひかた）」は、紀勢本線沿いの日方川下流に広がる地区です。かつては海草郡日方町として独立した自治体を形成し、明治期には町制も施行されました。現在は海南市の北西部を占め、市の中心的な機能の一部を担っています。2012年時点で人口は4,762人です。
和歌山県海草郡に位置していた安原村に関する解説です。明治期に名草郡の一部として誕生後、郡の統合を経て海草郡に属しました。昭和の合併期には和歌山市に編入され、その歴史に幕を閉じました。村の沿革と交通網について詳述します。
和歌山県海草郡に位置した旧村。明治期に発足し、熊尾寺山や日方川に囲まれた自然豊かな地域でした。野上電気鉄道が通り、地域の交通を担いましたが、昭和初期に周辺町村と合併し、現在の海南市の一部となりました。
和歌山県海草郡に位置した内海町（うつみちょう）は、黒江湾の内海に面していることに由来する名称を持ちます。1889年に村として発足し、1921年に町制を施行しましたが、1934年には周辺の町や村と合併し、現在の海南市の一部となってその歴史に幕を閉じました。
和歌山県海草郡に存在した村で、「かめがわむら」と読みます。現在の海南市中心部北東、紀勢本線黒江駅の東側にあたる地域でした。1889年に成立し、1955年に海南市へ編入され廃止されました。城ヶ峰や高倉山、亀ノ川など地理的特徴を有していました。
秋田八丈は、秋田県に伝わる草木染めの絹織物です。ハマナスやカリヤスなど自然の恵みから生まれる温かみのある茶色や黄色を基調とし、繊細な縞や格子柄が特徴。「秋田黄八丈」とも称される、独自の風合いを持つ伝統工芸品です。
『恋娘昔八丈』は江戸時代の人形浄瑠璃。安永4年（1775年）に江戸外記座で初演された松貫四・吉田角丸合作の全七段構成。実際の「白子屋事件」を基に、お家騒動や名器茶入れの紛失、若い男女の悲恋と殺人、陰謀を織り交ぜて描いた江戸義太夫の代表作の一つ。
染色において、染料を布や糸などの繊維にしっかりと固定する技術を媒染といいます。媒染剤という特定の薬品を用い、染色前、染色後、あるいは染色と同時に行われます。特に天然染料では不可欠な場合が多く、歴史も古く、使用する媒染剤によって色の発色も異なります。
愛媛県松山市に位置する繁多寺は、四国八十八箇所霊場の第五十番札所。真言宗豊山派の古刹で、淡路ヶ峠の中腹から松山市街や瀬戸内海を望む景勝地。本尊薬師如来は病気平癒に厚い信仰を集める。歴史ある堂宇が点在し、周辺は景観樹林保護地域に指定。
軍隊内で聖職者として兵士や部隊の精神面を支える軍人または軍属。多様な宗教に対応し、古くから存在。戦時国際法で非戦闘員として保護される。現代においてもその役割は重要性を増している。
和式（わしき）とは、日本の伝統的な様式や形式、あるいは日本古来の流儀を指す言葉です。西欧などから導入された新しい様式である洋式と対比して用いられることが多く、建築、生活習慣、文化など、非常に多岐にわたる分野において使用されます。その適用範囲の広さが特徴の一つです。
勝色（かちいろ）は、日本の伝統的な深く濃い紺色です。古くは褐色と記され、平安時代の染色技法「搗染め」に由来します。鎌倉時代には「勝つ」に通じる縁起色として武士に愛好され、現代でも勝利を願う色として親しまれています。
蛮絵装束は雅楽で用いられる特別な装束です。その起源は興福寺の法会での喪服に遡り、後に舞楽装束として発展しました。袍に描かれた個性的な動物文様「蛮絵」が最大の特徴で、着用する舞や色も左右で異なります。
雅楽の代表的な曲目「蘭陵王」は、管絃・舞楽双方で演奏されます。北斉の美貌の将軍、蘭陵武王・高長恭の故事に由来し、華麗な仮面を用いた勇壮かつ優雅な舞が特徴です。その歴史や装束について詳述します。
雅楽の右方舞に属する曲、納曽利（なそり）は、落蹲や双龍舞とも呼ばれます。主に二人で舞われ、二匹の龍が戯れる様子を表すとされます。勝負舞として陵王と対で演じられた歴史も持ち、その起源は明らかではありません。華やかな装束と独特の舞容が特徴です。
童子（どうじ）は、子供や貴人の召し使いの少年を指す言葉ですが、特に仏教においては、菩薩や仏の眷属、寺院で修行する少年など多様な意味を持つ重要な語彙です。また、子供の戒名の位号としても用いられます。その多岐にわたる用法と背景を解説します。
抜頭（ばとう）は、雅楽の曲名および舞楽面の一つ。太食調の唐楽で、林邑八楽に数えられます。天平年間に林邑僧仏哲が伝えたとされ、長い髪と高い鼻の独特な面を用いた一人舞が特徴。左方の舞楽ですが、右方の伴奏にも用いられ、還城楽と番舞をなします。
北海道護國神社は旭川市に位置し、北海道や樺太出身の戦没者など約6万3千柱を祀る神社です。明治35年の創祀から、度重なる名称変更や戦後の困難を経て、現在の姿に至る歴史を有しています。
「兵衛督（ひょうえのかみ）」は、古代から中世にかけての日本において、官職名および宮廷に仕える女性の通称（女房名）として用いられた言葉です。左右兵衛府の長官を指す役職名である一方、複数の女性がこの名で呼ばれ、特に七条院藤原殖子が著名です。
一時的に利用する衣装や装束を貸し出すサービス、またはその業種を指します。冠婚葬祭や式典、演劇、撮影など多様な用途に用いられ、その歴史は古く、江戸時代から記録があり、大正時代には専門業者が現れ、一般に広く普及しました。
佐賀県鹿島地方で受け継がれる佐賀錦は、金銀箔を用いた箔糸を経糸、絹糸を緯糸とする特異な織物です。網代や菱といった幾何学模様を、織り台と特殊な針を用いて丁寧に織り出し、品格ある美しさと独自の質感を生み出します。その歴史は古く、現代では主に袋物などに用いられます。
二陪織物（ふたえおりもの/ふたべおりもの）は、亀甲や唐草などの地紋の上に、花鳥文などの上紋を別の色糸で重ねて織り出した二重構造の高級織物です。平安時代から高貴な女性に愛用されましたが、度々奢侈禁制の対象となり、その歴史をたどります。
帽子掛け（ハットスタンド）は、帽子やコート、傘などを掛ける家具。特にヴィクトリア朝時代には玄関ホールに置かれ、実用的な機能に加え、家の富や社会的地位を示す装飾品としての役割も担った。現在ではブレイクダンスの技の名称としても知られる。
綸子（りんず）は、繻子織の地に地紋を織り出した光沢のある絹織物です。生糸を精練して作られ、薄手で柔らかく、艶やかな質感と滑らかな肌触りが特徴。主に女性の着物、特に礼装や長襦袢に用いられます。天正年間に技術が伝来し、慶長年間には日本人好みの意匠で人気を博しました。緞子と似ていますが、使用糸や風合いに違いがあります。
玉を連ねた祈りの道具は、仏教の数珠をはじめ、キリスト教のロザリオやイスラム教のミスバハなど、世界の様々な宗教に存在します。この記事では、これらの宗教・宗派を超えて用いられる、数珠のような形状を持つ祈りのための用具全般について解説します。
打衣（うちぎぬ）とは、平安時代を中心に用いられた衣類で、生地に特別な加工を施し、光沢と強い張りを与えたものを指します。これにより防水効果や美しい衣紋の保持が可能となり、公家の正装などに不可欠でした。その名は独特の加工技法である「砧打」に由来し、後に「板引」という技法が主流となります。
長唄三味線方の名跡である杵屋正次郎は、江戸時代から現代まで数代にわたり継承されてきました。歌舞伎との深い関わりの中で数多くの名曲を生み出し、その歴史は日本の伝統音楽史において重要な位置を占めています。代々の足跡と功績をたどります。
七代目市川團十郎が構想し、九代目が明治期に完成させた、成田屋・市川宗家に伝わる家芸集。「十八番」の名称ながら、得意芸を意味する「おはこ」として32または40の演目が撰ばれた。現代では上演機会が少ない。
平安時代後期から江戸時代にかけて、平安京北部に存在した邸宅および寺院。鎌倉時代以降、歴代上皇・天皇の御所として用いられ、皇室の持明院統の名の由来となった場所です。現在の京都市上京区にあたります。
畳箱（たとうばこ）は、額縁や大切な作品、図面などを保管・保護するための箱です。畳紙に由来し、黄袋と併用されることが多い。上部を折り曲げ紐で留める「タトウ式」の構造が特徴で、頑丈な作りから貴重品の収納に適しています。タトウ、タトウ箱とも呼ばれます。
中啓は、折り畳んでも扇の上端が広がる独特な形状を持つ、日本固有の扇です。末広とも呼ばれ、親骨の反りが生み出すこの形は、主に公家や武家の儀礼、能・狂言・歌舞伎の舞台、神事など、格式ある場面で用いられる伝統的な具です。
甚兵衛とは、夏の和装である甚平の別称として、また日本の人名、そして地名（千葉県印西市の大字）として用いられる言葉です。特に人名としては、歴史上の様々な時代や地域において、農家、商人、役人など、多様な職業や立場の人物がこの名を持っていました。その幅広い用例は、日本の社会や文化の様々な側面に触れる機会を提供します。
被服学整理学（ひふくせいりがく）は、被服学における専門分野の一つ。布地の質感調整を原義とし、今日では応用界面科学として洗浄、加工、染色、色彩といった衣類の維持・管理に関わる様々な技術や現象を総合的に研究します。
布や反物を洗い張りしたり染めたりする際に、その幅が縮むのを防ぎ、一定に保つために用いられる道具。両端で布を固定する細い棒で、和服の加工に欠かせない。しんし、しいし、籡、テンプルとも呼ばれる。
鳥追い（とりおい）は、主に小正月（1月14日・15日）に行われる日本の年中行事。農作物を鳥の食害から守ることを願う農村の行事と、新春を祝って家々を回る門付芸の二つの側面を持ちます。特に農村では子どもたちが中心となり、歌や火祭りなど地域の特色ある方法で行われます。
頭の耳ぎわから生える側面の髪を「鬢（びん）」と呼びます。現代の「サイド」の前方に位置し、特に日本のかつての男性の髪型では重要な部位でした。顔の印象を大きく左右するため様々な形に整えられ、また懲罰の対象となることもありました。その前縁部を「小鬢（こびん）」と言い、将棋用語の「小鬢」とは意味が異なります。
奈良時代の女性貴族が結った髪型「高髻」について解説します。唐の文化に影響を受けたこの髪型は、頭頂部に大きく髷を作り、類似の双髻や一髻といったスタイルと共に当時の上流社会の女性を彩りました。象牙細工の花簪を飾るなど、華やかな装いの一部でした。
江戸時代を通じて男性に広く普及した髪型、銀杏髷についての解説。月代を剃り、髷の先を広げるスタイルで、ちょんまげとは異なる。武家や町人、職種、年齢によって結い方には多様な特徴が見られ、それぞれの社会や生活スタイルを反映していた。
江戸時代末期に江戸の芸者が愛用した髪型「芸者島田」は、「つぶし島田」の一種です。控えめな髷と粋な飾り付けが特徴で、洗練された江戸の美意識を体現。京都の芸妓が結う「芸妓島田」とは異なりますが、艶やかな魅力は共通しています。
大正時代、特に都市部の女性たちの間で大流行した束髪スタイル。顔周りに大きなウェーブを作り、耳を覆うようにサイドを整え、低い位置で髷を結うのが特徴。当時のモダンな女性像を象徴し、最先端のパーマや髪色も取り入れられた。
室町時代に成立した、身分がそれほど高くない若い女性に愛された髪形。特に遊女や女歌舞伎役者に流行した。高く結い上げた髷が特徴で、後に花魁の象徴となる横兵庫の源流となった髪形である。名前の由来は諸説ある。
稚児髷（ちごまげ）は、日本髪の一種で、頭上で髪を二つに分け、輪状に結う髪型です。古くは公家や寺院の少年、江戸時代以降は少女に多く結われ、現代では主に子供、特に七五三などの晴れの日に少女が結う姿が見られます。
江戸時代、文化・文政期以降に遊郭で太夫見習いの少女「禿」が結った華やかな髪型「禿島田」。高島田を基としつつ、独自の豪華な髪飾りで飾られ、一般には広まらず遊郭内で継承されました。現在は歌舞伎や祭りで見られます。
江戸時代の御殿女中や官女が結った髷「片外し」。笄への独特な髪の巻き方と平たい「つと」が特徴で、京都から江戸へ伝わり大奥で広まりました。仮結びで下げ髪に容易に戻せ、控えめな髪飾りと品格が特徴。歌舞伎の特定の女形役柄も指します。
江戸中期に大流行した日本髪の鬢の一種で、石灯籠の笠のように左右へ大きく張り出した形状が特徴です。この独創的なスタイルは、当時の日本髪全体の結い方に変革をもたらし、現代では結うのが困難な技法となっています。
水車髷（すいしゃまげ）は、明治期に京阪地方の少女や若い女性に愛された日本髪の一種です。島田髷系の結綿から派生し、髪飾りの笄などを水車に見立てたことに名が由来します。潰し島田の中でも複雑な結い方が特徴で、特に髷に垂直に挿す笄が、よく似た「おしどり」との識別の決め手となります。当時の乙女たちの華やかさを彩った髪型です。
江戸時代の女性の髪型「櫛巻き」は、髷を櫛に巻きつける独特で簡易な結い方が特徴です。手軽さから粋筋や職業を持つ女性に愛され、宝暦年間に浅草の名物娘が結って流行したと伝わる、比較的手間のかからない髷の一つです。
江戸時代中期以降、吉原や島原などの高級遊女に愛用された、横に大きく張り出した豪華な髪形です。立体的な髷と多種多様な髪飾りが特徴で、当時の遊里文化を象徴する結い方として知られています。
明治時代に女性の間で結われた髪型「楽屋銀杏」についての解説です。歌舞伎の女形に由来し、地域によって「はわせ」「思い月」とも呼ばれました。特徴的な髷や前髪、シンプルな飾り、そして派生した華やかな「梅もどき」についても詳述します。
「束髪」とは、明治時代に西洋の髪形の影響を受けて生まれた、女性の簡便な結髪です。それまでの複雑な日本髪に代わるものとして考案され、衛生的で手軽に結えることから瞬く間に広まり、文明開化期の新しい女性像を象徴する髪形となりました。多種多様なスタイルが生まれ、社会現象にもなりました。
江戸時代に粋人の間で流行した男髷。広い月代と細く高く結い上げた髷を急角度で垂らす優美なスタイルが特徴で、吉原の客層を中心に多様な形が生まれた。浮気発覚時に遊女の「髪切り丸」で切られた後、豆本多に結い直された逸話も知られる。
元禄期に流行した女性の髪型、春信風島田（元禄島田）を解説。島田髷の古い原型で、十代の若い女性に愛されました。男性髷の名残を残しつつ洗練され、浮世絵師鈴木春信の美人画に多く描かれたことからその名があります。髷が水平に近いのが特徴です。
江戸時代初期に武家の姫君の間で流行した髪型、吹輪（ふきわ）。髷を幅広く平たい輪のように結うのが特徴で、公家の姫君とは異なる結髪文化を反映します。歌舞伎では豪華な髪飾りで姫役を象徴しました。
古墳時代の女性に結われた特徴的な髪形「古墳島田」。後世の島田髷とは時代が大きく異なるが、結い方の一部に共通点を持つ。女性埴輪に見られ、かつては巫女の髪形と考えられたが、現在はより一般的な女性の髪形と解釈されている。
江戸時代後期から明治末にかけて、上方を中心とした西日本の町家の若い既婚女性に広く結われた日本の伝統的な髪形。笄を用いることから「笄髷」の一種に分類され、現代では舞妓が衿替え直前に結う特別な髷として知られる。
京風島田は、京都の芸妓が正装時などに結う独特な島田髷です。投げ島田の一種で、髷が垂直に近い角度で立ち上がり、後部が大きく突き出すのが特徴です。かつては広く結われましたが、現在は限られた機会に見られる落ち着いた雰囲気の髷型です。
江戸時代後半から大正期にかけて、京都・大阪など西日本の既婚女性が正装時に結った日本髪の一種「両輪（りょうわ）」。第一子出産後、本元服を迎えた女性が結う髷で、東京の丸髷に相当する格式を持つ。
平安時代から現代の宮廷行事まで続く男性貴族の髪型である一髻（ひとつもとどり）。冠の下に隠されるため「冠下髻」とも呼ばれ、人前ではほとんど目にすることがなかった。髪を一つにまとめ、元結で千鳥掛けに結い上げて冠の中に収める。結い方や元結の色・巻き数は身分や状況により異なった。
江戸時代後期の天保から嘉永にかけて流行した島田髷の一種、潰し島田。髷の中央がぺしゃんと潰れたような独特の形状を特徴とし、主に芸者や女性の師匠、後に遊女や粋好みの娘に愛されました。高島田に対抗する形で生まれ、その崩れたような粋な印象が魅力でした。
服飾研究者、共立女子大学教授。大阪生まれ。東京藝術大学卒業後、東京国立博物館に長年勤務し染織研究に携わる。現在は日本の染織文化や服飾史を専門に研究。著書・監修書多数。きもの文化賞受賞。日本の豊かな染織文化の魅力を発信している。
静岡県西部、遠州地方に伝わる伝統的な綿織物「遠州綿紬」は、8つの工程がすべて地域内で完結する昔ながらの製法を守り続けています。100柄を超える多彩なデザインと、使い込むほど肌に馴染む独特の風合いが特徴で、地域のモノづくりの原点として現代に受け継がれています。
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