呉 (姓)

呉（ご、くれ）

呉（ご、くれ）は、東アジアに広く分布する姓の一つです。中国、朝鮮、ベトナム、日本など、各地で異なる歴史と文化を背景に、多くの人々に受け継がれてきました。この姓は、それぞれの地域で異なる発音や表記を持つことが特徴です。

中華圏

中国

呉（ご）は、中国で非常に一般的な姓の一つです。2020年の国勢調査によると、中国で9番目に多い姓であり、2796.70万人がこの姓を名乗っています。北方語では「ウー」と発音され、閩南語では「ゴ」または「ゴー」、広東語では「ン」（ローマ字表記: Ng）と発音されます。発音が似ている「武」や「伍」と区別するために、「口に天の呉」と表現されることもあります。

台湾

台湾では、2018年の統計で7番目に多い姓であり、952,464人が呉姓を名乗っています。台湾においても、中国本土と同様に、呉姓は広く分布しています。

中華圏の著名な人物

中国、台湾、香港などの中華圏において、呉姓の著名人は多岐にわたります。歴史上の人物から現代の文化人、政治家まで、様々な分野で活躍しています。

呉起: 戦国時代の兵法家
呉広: 秦末期の反乱指導者
呉芮: 前漢の長沙王
呉漢: 後漢の武将
呉景: 後漢の武将
呉夫人: 後漢末の孫堅の夫人
呉懿: 蜀漢の武将
穆皇后呉氏: 蜀漢の昭烈帝の皇后
呉綱: 魏・呉の人物
呉道玄: 唐の画家
呉承恩: 明の文人、『西遊記』の作者とされる
呉偉業: 明末清初の詩人
呉三桂: 明末清初の軍人
呉敬梓: 清の文人、『儒林外史』の作者
呉昌碩: 清末から中華民国にかけての画家
呉鑑泉: 清末から中華民国にかけての武術家、呉式太極拳の創始者
呉佩孚: 直隷派の軍閥
呉濁流: 台湾の作家
呉晗: 中華人民共和国の歴史家
安藤百福（呉百福）: 日清食品の創業者
呉清源: 中国出身の囲碁棋士
呉健雄: アメリカの物理学者
呉法憲: 中華人民共和国の軍人、政治家
呉昌征: 台湾の野球選手
呉学謙: 中華人民共和国の政治家、外交官
呉儀: 中華人民共和国の政治家
呉天明: 中華人民共和国の映画監督
ゴー・チョクトン: シンガポールの政治家
呉邦国: 中華人民共和国の政治家
ジョン・ウー: 香港の映画監督
ン・マンタ: 香港の俳優
ジョン・ローン: 香港出身のアメリカの俳優
フランシス・ン: 香港の俳優
呉立紅: 中華人民共和国の環境活動家
ニッキー・ウー: 台湾の歌手・俳優
呉彦祖: 香港の俳優・映画監督
呉尊: ブルネイ出身の台湾の歌手・俳優
ディープ・ン: 香港の歌手・俳優
ヤン・ン: 香港の歌手・女優
キャリー・ン: 香港の歌手・女優
KevJumba: アメリカのコメディアン
呉念庭: 台湾の野球選手
ウー・イーファン: 中国系カナダ人の歌手・俳優

架空の人名

呉用: 『水滸伝』の登場人物

朝鮮

朝鮮における呉（オ）姓は、2015年の韓国の統計によると763,281人がいます。呉姓は、朝鮮半島においても歴史を持つ姓であり、多くの氏族が存在します。

呉氏の始祖

呉瞻: 中国から新羅に渡来したとされる人物
呉偃: 呉瞻を先祖に持つ高麗時代の人物
呉賢弼: 呉瞻の24代子孫、宝城呉氏の始祖
呉仁裕: 北宋から高麗に渡来、海州呉氏の始祖

朝鮮の呉氏の著名な人物

朝鮮半島では、政治家、文化人、スポーツ選手など、様々な分野で活躍する呉姓の人物が見られます。

呉世昌: 独立運動家
呉世応: 韓国の国会議員
呉有邦: 韓国の国会議員
呉世勲: 韓国の国会議員、ソウル特別市長
呉怜勲: 韓国の国会議員、済州特別自治道知事
呉善花: 日本の評論家
呉昇桓: 韓国のプロ野球選手
呉勝虎: 朝鮮民主主義人民共和国の外交官、大使
呉章銀: 韓国のサッカー選手
呉貞姫: 韓国の小説家
オ・マンソク（呉万石）: 韓国の俳優
オ・ジホ（呉智昊）: 韓国の俳優
オ・ナラ: 韓国の女優
オ・ヨンソ: 韓国の女優
オ・セフン: 韓国の男性歌手、EXOのメンバー
オ・シオン: 韓国の男性歌手、NCTのメンバー

呉氏の氏族

文献によると、呉氏には210本の本貫があるといわれています。その中でも、海州呉氏、宝城呉氏、同福呉氏が呉氏人口の90%以上を占めています。

ベトナム

ベトナムでは、呉（ゴ、ンゴ）という姓が使われています。ベトナムの歴史においても、呉姓の人物が重要な役割を果たしてきました。

ベトナムの呉氏の著名な人物

呉権: 呉朝の創始者
ゴ・ジン・ジェム（呉廷琰）: ベトナム共和国大統領
ゴ・バオ・チャウ（呉宝珠）: 数学者

日本

日本では、呉（くれ、ご）という姓が見られます。この姓は「伎（くれ）」と表記されることもありました。

呉氏の由来

呉姓の由来にはいくつかの説があります。

飛鳥時代から奈良時代にかけて、日本は中国南朝と交流があり、その南朝の支配地域が三国呉の故地であったため、「くれ」の音に当てて「呉」の字を使用したという説。
中国から渡来した氏族が、その移住地を氏としたという説。
中国に使者として赴いた者が、その縁から呉の氏を名乗ったという説

日本の呉氏の氏族

呉勝（くれ の すぐり）: 渡来系氏族
呉公（くれ の きみ）: 中臣氏の一族
吉士族の呉氏: 遣唐使を務めた吉士長丹からはじまる
百済渡来人の呉氏: 百済から渡来した氏族
呉人裔の呉氏: 渡来系氏族

日本の呉氏の著名な人物

呉文聰: 統計学者
呉秀三: 医学者
呉建: 医学者
呉文炳: 経済学者
呉茂一: 西洋古典学者
呉智英: 評論家
呉由姫: 漫画家

その他

呉浦（現在の広島県呉市）の開発領主は呉氏であったという記録があります。

まとめ

呉姓は、東アジアの各地で歴史と文化を背景に受け継がれてきた姓です。その起源や歴史は多様であり、各地で異なる発音や表記を持つことが特徴です。それぞれの地域で多くの著名人を輩出しており、その影響力は現代においても続いています。

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