グレートブリテン島の地質

グレートブリテン島の地質：太古からの変遷と豊かな多様性

グレートブリテン島は、その多様な地質構造によって特徴づけられる島です。地球の歴史の半分以上前の太古代から、新生代に至るまで、様々な地質時代の岩石が地表に露出しており、その複雑な地史は、イングランド、ウェールズ、スコットランドそれぞれの地域に独特の景観を生み出しています。

地殻構造と基盤岩

地震学的研究によると、グレートブリテン島を含むこの地域の地殻は厚さ27～35kmと推定されます。最古の岩石はスコットランド北西部で発見されており、約27億年前の太古代のものです。これは地球誕生から約46億年と考えると、地球の歴史の半分よりも古い岩石です。これらの岩石は、グレートブリテン島とアイルランド島の地殻の大部分を形成し、ブルターニュ半島やチャンネル諸島にも広がっていると考えられています。一方、最も新しい岩石はイングランド南東部で見られます。

グレートブリテン島の基盤岩は、主に古い変成岩と火成岩からなり、これらは様々な時代の堆積岩に覆われています。この複雑な地質構造は、長期間にわたるプレートテクトニクスの活動によるものです。大陸の衝突、造山運動、断層運動、火山活動、そして海水準の変動は、地層の形成と変成に大きな影響を与えてきました。

表層堆積物

基盤岩の上に広がるのは、比較的新しい未固結の堆積物です。氷河時代の氷河によって運ばれた氷礫土や砂礫など、様々な物質が含まれます。これらの表層堆積物は、建築や土木工事、地下水の開発、砂利資源の利用、土壌の肥沃度など、様々な面で重要な役割を果たします。かつては「漂積層（Drift）」と呼ばれていたこれらの堆積物は、最近の地質図では「表層堆積物（superficial deposits）」として分類されています。

地質史：主要な時代区分

ここでは、P. Toghillによる解説に基づき、グレートブリテン島の地質史を概観します。

先カンブリア時代

太古代: スコットランド北西部のヘブリディーズ諸島で見つかるルイス片麻岩は、グレートブリテン島最古の岩石（約27億年前）であり、元々は地表に堆積した岩石が変成作用を受けてできたものです。
原生代: スコットランド北西部のハイランズには、褶曲した堆積岩からなる複合岩体が存在します。これは、約10億年前から形成が始まり、約8億年前には厚さ7kmのトリドン砂岩が堆積しました。古地磁気学的な証拠から、約5億2000万年前には現在のグレートブリテン島が、ローレンシア大陸とゴンドワナ大陸という2つの大陸に分かれて存在していたことが示唆されています。ゴンドワナ大陸の一部であったイングランドとウェールズは、沈み込み帯付近に位置し、火山島が散在する浅い海に沈んでいました。約6億年前のカドミアン造山運動は、イングランドとウェールズの景観を大きく変えました。

古生代

カンブリア紀: 海水準の上昇によりイングランドとウェールズの火山地帯が浸水し、新たな堆積層が形成されました。スコットランド北部では砂岩が堆積し、初期の動物化石が出現します。
オルドビス紀: 約5億年前、グレートブリテン島南部、北アメリカ東海岸、ニューファンドランド島南東部がゴンドワナ大陸から分離し、アヴァロニア大陸を形成しました。ウェールズ北部では火山活動が活発で、その痕跡は現在も残っています。
シルル紀: アヴァロニア大陸がバルティカ大陸と合体し、ローレンシア大陸と衝突することで、グレートブリテン島の南北が合体しました。このカレドニア造山運動によって、グレートブリテン島の北部と西部にアルプス風の山脈が形成されました。グレートグレン断層はこの時代の代表的な地質構造です。
デボン紀: 大陸衝突は続き、造山運動と火山活動が活発でした。海水準の変動により、海進と海退が繰り返されました。デヴォン州で発見された海洋起源の岩石がこの地質時代の名前の由来となっています。
石炭紀: グレートブリテン島は赤道直下に位置し、温暖な気候で石炭系石灰岩が堆積しました。後の産業革命を支えた豊富な石炭層はこの時代に形成されました。バリスカン造山運動はイングランド南西部に大きな影響を与え、花崗岩が形成され、銅やスズなどの鉱物が産出されました。
ペルム紀: 不毛の砂漠環境と、バリスカン造山運動による侵食が特徴です。後に浅海に水没し、頁岩、石灰岩などが堆積しました。

中生代

三畳紀: パンゲア大陸の移動により、グレートブリテン島は赤道から離れ、新赤色砂岩が堆積しました。
ジュラ紀: パンゲア大陸が分裂し、海水準が上昇し、ジュラ紀の堆積物が堆積しました。これはヨークシャーからドーセットまで広がり、砂岩、石灰岩などからなります。北海油田と天然ガス田はこの時代の堆積物に含まれます。
白亜紀: 現在の大陸が形成され、大西洋が開きました。チョーク（白亜）と燧石が堆積し、ドーバーの白い崖やソールズベリー平原を形成しました。

新生代

古第三紀: アントリム高原、ジャイアンツ・コーズウェーなどの火山活動による地層が形成されました。アルプス造山運動は、ロンドン盆地やサウス・ダウンズなどの地形を形成しました。
新第三紀: ウェールズ、ペナイン山脈、スコットランドのハイランズで隆起と侵食が起こりました。植物相と動物相は現在の形態へと進化しました。
第四紀: 更新世の氷河作用がグレートブリテン島の地形を大きく変えました。最も厳しかったアングリア氷期には、厚さ1000mの氷河がロンドンまで達しました。この時代の氷河作用によって、スコットランド西海岸のフィヨルドや湖水地方のU字谷などが形成されました。完新世には、泥炭堆積物や沿岸部の堆積物が形成され、森林伐採による侵食も進みました。現在も、スコットランドは隆起を続けており、イングランド南部と東部は沈降しています。海水準の上昇も海岸線の浸食に影響を与えています。

地質学的特色と資源

グレートブリテン島には、チェダー渓谷、ジュラシック・コースト、グレートグレン断層など、多くの地質学的特色があります。また、石炭、北海油田・ガス田などの豊富な地質資源も存在し、歴史的に経済発展に大きな役割を果たしてきました。

歴史的な出来事

グレートブリテン島では、地滑りや地震などの地質学的災害も発生しています。

関連機関・団体

英国地質調査所、ロンドン地質学会など、多くの機関が地質調査や研究を行っています。

英国地質学の先駆者たち

ジェームズ・ハットン、ウィリアム・スミスなど、多くの地質学者たちがグレートブリテン島の地質研究に貢献してきました。

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