ジョン・トロス

マニアック・ジョン・トロス：黄金のギリシャ人ヒールレスラー

"マニアック" ジョン・トロス（"Maniac" John Tolos, 1930年9月18日 - 2009年5月28日）は、カナダ・オンタリオ州ハミルトン出身のプロレスラー。
ザ・ゴールデン・グリーク（The Golden Greek）の異名を持ち、その名の通りギリシャ系の血を引くカナダ人である彼は、ヒール（悪役）としての強烈な個性を発揮し、観客を魅了した。
特に日本では、1971年にアントニオ猪木が保持していたユナイテッド・ナショナル・ヘビー級王座を奪取したことで、その名を知られることとなった。

兄弟タッグからシングルへ

トロスのキャリアは、兄であるクリス・トロスとのタッグチームから始まった。1953年10月27日、サンフランシスコ地区でNWA太平洋岸タッグ王座を獲得し、その実力を証明。
その後、ロサンゼルスではジン・キニスキーとのコンビで、1954年10月13日にNWAインターナショナルTVタッグ王座を手にした。

1950年代半ばから1960年代後半にかけては、クリスとの兄弟タッグで北米の主要テリトリーを席巻。カルガリー、トロント、バンクーバー、オハイオ、インディアナなど、各地でタッグタイトルを次々と獲得した。
WWWF（現WWE）では、1963年にスカル・マーフィー&ブルート・バーナードとの抗争を展開し、マディソン・スクエア・ガーデンでも激闘を繰り広げた。
同年12月28日には、ゴリラ・モンスーン&キラー・コワルスキーからWWWF USタッグ王座を奪取している。また、カナダのウィニペグにおけるAWAの興行にも出場し、ラリー・ヘニング&ハーリー・レイスが保持していたAWA世界タッグ王座に連続挑戦した。

1968年5月には、単独で日本プロレスに初来日。サイクロン・ネグロとのコンビで、ジャイアント馬場&アントニオ猪木のBI砲と対戦し、日本のファンに強烈な印象を与えた。

1970年代に入ると、クリスとのコンビを解消し、シングルプレイヤーとしての道を歩み始める。ロサンゼルスのNWAハリウッド・レスリングを主戦場とし、1970年11月20日にユナイテッド・ナショナル・ヘビー級王座を獲得。しかし、12月4日にレイ・メンドーサに敗れて王座を失う。

猪木との因縁、そしてアメリカス王座

1971年2月、再びユナイテッド・ナショナル・ヘビー級王座を戴冠するも、同年3月26日、日本から遠征してきたアントニオ猪木に敗れ、ベルトを日本に流出させてしまう。しかし、その6週間後の5月7日には、フレッド・ブラッシーを破り、アメリカス・ヘビー級王座を獲得。

以後1976年にかけて、コワルスキー、ビクター・リベラ、パク・ソン、パンピロ・フィルポ、グレッグ・バレンタインらを破り、同王座を再三獲得。ミル・マスカラス、アーニー・ラッド、エドワード・カーペンティアとも王座を賭けた抗争を繰り広げ、大ヒールとしてLAのマット界に君臨した。

1974年1月には新[[日本プロレス]]に来日し、猪木との因縁の対決が再び実現。同年10月にも再来日を果たしている。また、WWWFのMSG定期戦にもヒールのゲストとして度々出場し、1974年7月22日の定期戦ではブルーノ・サンマルチノのWWWFヘビー級王座に挑戦した。

テキサス、そしてハワイへ

1975年には、フリッツ・フォン・エリックが主宰するテキサス州ダラスのNWAビッグタイム・レスリングに参戦し、アル・マドリルやピーター・メイビアを相手にテキサス・ヘビー級王座を巡る抗争を展開。
1976年は、バンクーバーのNWAオールスター・レスリングにて、キンジ渋谷やビッグ・ジョン・クインと太平洋岸ヘビー級王座を争った。

1977年から1978年にかけては、ハワイのNWAミッドパシフィック・プロモーションズにてベビーフェイス（善玉）として活動。同地区の人気スターだったビリー・フランシスらと組み、ジェシー・ベンチュラ&スティーブ・ストロング、バディ・ローズ&ビッグ・ジョン・スタッドなどのチームとタッグ王座を争った。

国際プロレス、そして引退へ

1979年3月には国際プロレスに来日し、3月26日にラッシャー木村のIWA世界ヘビー級王座に挑戦。帰米後の5月3日には、テキサスのアマリロ地区にてミスター・サトーこと佐藤昭雄と組み、高千穂明久&リッキー・ロメロからウエスタン・ステーツ・タッグ王座を奪取している。

その後は古巣のロサンゼルスに戻り、1980年にウォルター・ジョンソン、1981年にクリス・アダムスを破りアメリカス・ヘビー級王座に返り咲いた。これが最後のタイトル戴冠となり、ロサンゼルスにおけるWWFの興行に単発出場していた1984年に正式に引退した。

引退後は、1986年10月9日に両国国技館で行われた猪木対レオン・スピンクスの異種格闘技戦にジャッジの1人として来日。アメリカでは久しくプロレスのビジネスから離れていたが、1990年にカリフォルニア州マリナ・デル・レイのUWFにて、カウボーイ・ボブ・オートンやカクタス・ジャックのマネージャーとして業界に復帰した。1991年には、ミスター・パーフェクトのトレーナー兼マネージャーのコーチ（Coach）を名乗りWWFに登場している。

1992年9月の最後の来日時には、FMWの3周年記念興行に出場し、9月19日に横浜スタジアムにて、往年の宿敵コワルスキーとのエキシビション・マッチを行った。

晩年はロサンゼルスのウッドランドヒルズに居住し、心臓発作および脳梗塞との闘病生活を送っていた。2009年5月28日、腎不全により死去。78歳没。没後の2012年、NWA殿堂に迎えられた。

得意技

ダブル・ニー・ドロップ：両膝を揃えて落下するスタイルのニー・ドロップ。トロスがオリジナルとされる。キラー・カーンのフィニッシュ・ムーブとして知られる。

獲得タイトル

ワールド・ワイド・レスリング・フェデレーション
WWWF USタッグ王座：1回（w / クリス・トロス）
NWAロサンゼルス / NWAハリウッド・レスリング
NWAインターナショナルTVタッグ王座：1回（w / ジン・キニスキー）
NWAユナイテッド・ナショナル・ヘビー級王座：2回
NWAアメリカス・ヘビー級王座：10回
NWAアメリカス・タッグ王座：6回（w / グレート小鹿×2、Louie Tillet、Rock Riddle、チャボ・ゲレロ、ジ・アサシン）
NWAビート・ザ・チャンプTV王座：3回
NWA太平洋岸ブラスナックル王座（ロサンゼルス版）：3回
NWAオールスター・レスリング
NWA太平洋岸ヘビー級王座：1回
NWA世界タッグ王座（バンクーバー版）：3回（w / トニー・ボーン、クリス・トロス×2）
NWAカナディアン・タッグ王座（バンクーバー版）：7回（w / トニー・ボーン×2、クリス・トロス×2、ブラック・テラー、ダッチ・サベージ、ドン・レオ・ジョナサン）
NWAビッグタイム・レスリング
NWAテキサス・ヘビー級王座：2回
NWAテキサス・タッグ王座：1回（w / デューク・ケオムカ）
NWAサンフランシスコ
NWA太平洋岸タッグ王座（サンフランシスコ版）：1回（w / クリス・トロス）
スタンピード・レスリング
NWAインターナショナル・タッグ王座（カルガリー版）：1回（w / クリス・トロス）
メープル・リーフ・レスリング
NWAインターナショナル・タッグ王座（トロント版）：3回（w / クリス・トロス）
ミッドアトランティック・チャンピオンシップ・レスリング
NWA南部タッグ王座（ミッドアトランティック版）：1回（w / クリス・トロス）
チャンピオンシップ・レスリング・フロム・フロリダ
NWA世界タッグ王座（フロリダ版）：1回（w / クリス・トロス）
NWAデトロイト
NWA世界タッグ王座（デトロイト版）：1回（w / クリス・トロス）
NWAミッドパシフィック・プロモーションズ
NWA北米ヘビー級王座（ハワイ版）：1回
NWAハワイ・ヘビー級王座：1回
NWAハワイ・タッグ王座：2回（w / ビル・フランシス、スティーブ・ストロング）
NWAウエスタン・ステーツ・スポーツ
NWAウエスタン・ステーツ・タッグ王座：1回（w / ミスター・サトー）
ナショナル・レスリング・アライアンス
* NWA殿堂：2012年

もう一度検索