チャンピオンシップ・レスリング・フロム・フロリダ

チャンピオンシップ・レスリング・フロム・フロリダ（CWF）とは

チャンピオンシップ・レスリング・フロム・フロリダ（Championship Wrestling from Florida、略称：CWF）は、アメリカ合衆国のフロリダ州を拠点に活動していた伝説的なプロレス団体です。NWA（National Wrestling Alliance）の主要傘下団体として、特に1970年代の黄金期には、エディ・グラハムが主宰者となり、ダスティ・ローデスをエースとして、圧倒的な人気を博しました。本拠地のタンパを中心に、マイアミ、ジャクソンビル、セントピーターズバーグ、オーランドといったフロリダ州の主要都市で大規模な興行を展開し、昭和期の日本では「NWAフロリダ地区」という名称でも広く知られていました。

創設から1960年代

CWFの歴史は、NWA結成後の1949年に、プロレスラーのクラレンス・P・ラットレル（通称："カウボーイ" クラレンス・P・ラットレル）が創設したことに始まります。それ以前の1930年代前半から、フロリダ州には既にプロレス団体が存在しており、1934年にはフロリダ・ヘビー級王座、1936年には南部ヘビー級王座が認定されていました。ラットレル自身もこれらの王座を戴冠していましたが、CWFの創設後、フロリダ王座は南部王座に統合され、1966年まで封印されることになります。

1950年代から1960年代前半にかけては、フレッド・ブラッシー、レイ・スティーブンス、フレッド・アトキンス、バディ・オースチン、ボリス・マレンコ、ボブ・オートン、ボブ・エリス、ターザン・タイラー、そして後にオーナーとなるエディ・グラハムやヒロ・マツダといった名レスラーたちが、南部ヘビー級王座を巡って激しい戦いを繰り広げました。1966年には、フロリダ・ヘビー級王座がNWAの認定タイトルとして復活し、ワフー・マクダニエル、ジョニー・バレンタイン、ジョー・スカルパ、レッド・バスチェン、ハンス・モーティア、サイクロン・ネグロ、デール・ルイス、ミスター・サイトー、ジャック・ブリスコらが王座を戴冠しました。また、1960年代からは、ゴードン・ソリーが実況アナウンサーを務めるTV番組が高視聴率を獲得し、CWFの人気をさらに高めることとなりました。

エディ・グラハムの時代

1961年よりプロモーションの買収を開始していたエディ・グラハムは、1970年9月にCWFの全権を掌握しました。1970年代前半には、フロリダ・ヘビー級王者のジャック・ブリスコがエースとして活躍し、ジョニー・バレンタイン、ターザン・タイラー、クリス・マルコフ、サンダーボルト・パターソン、ラリー・ヘニング、グレート・メフィスト、ディック・マードック、ボビー・ダンカン、オレイ・アンダーソン、ベアキャット・ライト、ポール・ジョーンズ、マッドドッグ・バション、ティム・ウッズ、バディ・コルト、ボビー・シェーンらを相手に防衛戦を繰り広げました。また、ジャック&ジェリー・ブリスコ対ドリー・ファンク・ジュニア&テリー・ファンクの兄弟タッグ抗争も大きな人気を博しました。

ジャック・ブリスコがNWA世界ヘビー級王座を戴冠した後、それまでヒールのポジションにいたダスティ・ローデスが、マネージャーのゲーリー・ハートおよびパートナーのパク・ソンとの仲間割れを機に、1974年5月よりベビーフェイスに転向。以降、アメリカン・プロレスを代表する大スターとなり、CWFも全米有数の繁栄テリトリーへと発展しました。オーナーのエディ・グラハムは1976年から1978年までNWAの会長を務め、1978年1月25日にはマイアミ・オレンジボウルにて、当時のNWA世界ヘビー級王者ハーリー・レイス対WWWFヘビー級王者スーパースター・ビリー・グラハムのダブル・タイトルマッチを「スーパーボウル・オブ・レスリング」と銘打って実現させるなど、その手腕を発揮しました。

ベビーフェイス陣営では、ペドロ・モラレス、ロッキー・ジョンソン、ボボ・ブラジル、マニー・フェルナンデスなどがローデスの脇を固め、1970年代後半からはジャック・ブリスコもCWFに復帰しました。1980年代に入ると、バリー・ウインダムやマイク・ロトンドといった新しいスター候補も誕生しました。ベテランのワフー・マクダニエルやミスター・レスリング2号、有望株だったブルース・リードやビリー・ジャック・ヘインズ、フェイスターンしたブラックジャック・マリガンやバグジー・マグロー、ゲスト出場のアンドレ・ザ・ジャイアントもローデスと共闘し、ディック・マードックも時折参戦してテキサス・アウトローズを再結成しました。

ヒール陣営では、ザ・ファンクス、ラーズ・アンダーソン、ボブ・ループ、キラー・カール・コックス、ザ・スポイラー、ジョー・ルダック、アーニー・ラッド、レロイ・ブラウン、ドン・ムラコ、イワン・コロフ、ニコライ・ボルコフ、バロン・フォン・ラシク、ディック・スレーター、ボビー・ジャガーズ、ロン・バス、ケビン・サリバン、マーク・ルーインらが活躍し、アブドーラ・ザ・ブッチャーやブルーザー・ブロディもスポット参戦しました。サー・オリバー・フンパーディンクやJ・J・ディロンなどの悪党マネージャーが、ローデスらベビーフェイス陣営との抗争を指揮しました。東洋系のヒールでは、ミスター・サイトーをはじめ、キラー・カーン、ミスター・ヒト、ミスター・サト（ザ・グレート・カブキ）、ミスター・サクラダ（ケンドー・ナガサキ）などが参戦。NWA世界ヘビー級王者のハーリー・レイスやリック・フレアーも定期的に登場して防衛戦を行いました。

日本との関係では、当初はNWAルートで全日本プロレスと接点を持っていましたが、ブッカーのヒロ・マツダの仲介で1978年より新日本プロレスと提携しました。1980年4月16日にはマイアミビーチにて、アントニオ猪木がボブ・バックランドに挑戦したWWFヘビー級王座のタイトルマッチが行われました。後にドリー・ファンク・ジュニアがブッカーに就任したこともあり、1982年以降は再び全日本プロレスと提携しています。

エディ・グラハムの死後とCWFの終焉

1984年より、WWFがビンス・マクマホン・ジュニアの新体制下で全米侵攻を開始し、アメリカのプロレス界における旧来のテリトリー制が崩壊しつつある中、金融投資の失敗でアルコール依存症に陥ったエディ・グラハムが1985年1月21日に自ら命を絶ちました。グラハムの死後はデューク・ケオムカとヒロ・マツダが団体の運営を引き継ぎ、新日本プロレスとの提携も再開しましたが、観客動員は徐々に落ち込みました。1987年2月には、ジム・クロケット・ジュニアがCWFを買収し、同じ南東部の主要テリトリーだったジョージア地区と同様、ジム・クロケット・プロモーションズに吸収合併されることとなりました。

CWF売却後、エディ・グラハムの息子マイク・グラハムはジム・クロケット・プロモーションズを離脱し、1988年4月、新たにフロリダ・チャンピオンシップ・レスリング（FCW）を設立しました。FCWはその後、プロフェッショナル・レスリング・フェデレーション（PWF）と名称を変更し、ダスティン・ローデスやケンドール・ウインダムがヘビー級王座を獲得しましたが、1991年に活動を停止しました。なお、FCWの名称は、長年フロリダを主戦場としていたスティーブ・カーン主宰のWWEの下部団体に引き継がれています。

CWFは、アメリカンプロレスの黄金時代を象徴する団体の一つとして、その名を歴史に刻んでいます。

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