1989年の鉄道

1989年の鉄道

1989年は昭和64年から平成元年へと元号が移り変わった、日本の鉄道史において多様な動きが見られた一年でした。全国各地で路線の延伸や新駅の開業が行われた一方で、一部の地方線がその役目を終え、第三セクター鉄道への転換や廃止となるなど、新旧交代が進行しました。

主な出来事

1月

帝都高速度交通営団（現：東京メトロ）半蔵門線が半蔵門駅から三越前駅まで延伸し、新たに神保町駅が開業しました。

3月

JR西日本では片町線（木津～長尾間）の電化や複線化が進み、松井山手駅、太秦駅、玉手駅などの新駅が開業しました。
JR九州では鹿児島本線、筑豊本線、日豊本線、豊肥本線に多くの新駅が誕生しました（諏訪、九産大前、春日、都府楼南、天拝山、新入、浦田、財光寺、加納、いこいの村）。鹿児島本線の白木原駅は大野城駅に改称されました。
真岡鐵道に北山駅が開業しました。
東京都交通局新宿線が篠崎駅から本八幡駅まで延伸開業し、本八幡駅が新たに加わりました。浅草線の江戸橋駅は日本橋駅に名称が変更されました。
横浜博覧会開催に伴い、臨港線（日本丸～山下公園）と横浜博線（美術館～シーサイドパーク）が開業し、各線に新駅が設けられました。
樽見鉄道樽見線が神海駅から樽見駅まで延伸され、高科、鍋原、日当、高尾、水鳥、樽見の各駅が開業しました。
JR東日本足尾線（桐生～足尾本山）が廃止され、第三セクターのわたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線として桐生駅から間藤駅までの営業を開始しました。この転換に伴い、一部の駅名変更（神土→神戸）や廃止駅、開業駅がありました。JR貨物も関連区間の第二種鉄道事業を廃止しました。水島臨海鉄道水島本線に福井駅が開業しました。
JR東海道・山陽新幹線で高速化された「グランドひかり」の運転が始まりました。臨時寝台特急「エルム」も運行を開始しました。

4月

秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線が比立内駅から松葉駅まで延伸開業し、複数の新駅（西鷹巣、奥阿仁、阿仁マタギ、戸沢、上桧木内、左通、羽後中里）が誕生しました。旧北線・南線が秋田内陸線として統合され、急行「もりよし」の運行も開始されました。
秩父鉄道秩父本線に桜沢駅が開業しました。
富山地方鉄道本線の電鉄桜井駅が電鉄黒部駅に改称されました。
紀州鉄道紀州鉄道線の一部区間（西御坊～日高川）が廃止され、日高川駅が廃止となりました。
京王帝都電鉄（現：京王電鉄）京王八王子駅が地下化されました。
近江鉄道本線に水口松尾駅と水口城南駅が開業しました。
JR九州高千穂線（延岡～高千穂）が廃止され、高千穂鉄道高千穂線として全区間が転換開業しました。
JR北海道の標津線（標茶～根室標津、中標津～厚床）が全線廃止となり、複数の駅が廃止されました。
西武鉄道と秩父鉄道の直通運転が始まりました。

5月

JR北海道の天北線（音威子府～南稚内）と名寄本線（名寄～遠軽、中湧別～湧別）が全線廃止となり、多くの駅が廃止されました。これに伴い、急行「天北」は宗谷本線経由に変更され、急行「宗谷」に統合されました。

6月

JR北海道池北線（池田～北見）が廃止され、北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線として全線が転換開業しました。

7月

横浜新都市交通（現：横浜シーサイドライン）金沢シーサイドラインが新杉田駅から金沢八景駅まで全線開業し、多くの新駅が開業しました。
JR東海東海道本線の金山駅が接続駅として開業しました。名古屋鉄道名古屋本線の金山橋駅は金山駅に、各務原線の岐阜大学前駅は市民公園前駅にそれぞれ改称されました。
豊橋鉄道渥美線に神戸駅が開業しました。
タイ国有鉄道東本線の一部区間が延伸開業しました。
JR東海参宮線に臨時駅の池の浦シーサイド駅が開業しました。
JR北海道留萠本線に臨時駅の浜中海水浴場駅が開業しました。
JR北海道・東日本・西日本の3社に跨る団体専用列車として、豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の運行が開始されました。

8月

JR貨物根室本線貨物支線（釧路～浜釧路）が廃止され、浜釧路駅も廃止となりました。
JR九州鹿児島本線博多臨港線で第二種鉄道事業が開業し、臨時駅の福岡ボート前駅が開業しましたが、短期間で廃止されました。
JR北海道日高本線に臨時駅のフイハップ浜駅が開業しました。
JR西日本山陽本線に中野東駅と阿品駅が開業しました。
横浜市交通局地下鉄1号線の戸塚駅が本格開業しました。

9月

名古屋市交通局地下鉄桜通線が中村区役所駅（現：太閤通駅）から今池駅まで開業し、多くの新駅が開業しました。また、名城線の久屋大通駅も開業し、乗り換え駅となりました。
叡山電鉄鞍馬線に京都精華大前駅が開業しました。

10月

JR九州の伊田線、糸田線、田川線、湯前線が廃止され、それぞれ平成筑豊鉄道伊田線・糸田線・田川線、くま川鉄道湯前線として転換開業しました。多くの駅が引き継がれ、一部駅名変更や新駅開業もありました。JR貨物も関連区間の第二種鉄道事業を廃止・開業しました。
福井鉄道福武線に花堂南駅が開業しました。
前年に開業した横浜博覧会の臨港線と横浜博線が閉幕に伴い廃止され、関連駅も廃止されました。
京阪電気鉄道鴨東線（三条～出町柳）が開業し、丸太町駅と出町柳駅が新設されました。
JR西日本阪和線羽衣線でワンマン運転が開始されました。
由利高原鉄道鳥海山ろく線に曲沢駅と吉沢駅が開業しました。

11月

SMRTトレインズ（シンガポール）のMRT東西線が延伸開業し、複数の新駅が開業しました。
JR西日本関西本線に東部市場前駅が開業しました。
JR九州長崎本線に臨時駅のバルーンさが駅が開業しました。

12月

JR貨物日豊本線貨物支線（細島線）の一部区間が休止され、細島駅も休止となりました。
西武鉄道新宿線の一部区間（新狭山～南大塚）が複線化されました。
山形鉄道フラワー長井線に白兎駅が開業しました。
SMRTトレインズMRT東西線がさらに延伸開業し、複数の新駅が開業しました。
JR九州宮田線（勝野～筑前宮田）が廃止され、磯光駅と筑前宮田駅が廃止となりました。
団体専用列車だった「トワイライトエクスプレス」が臨時列車に変更されました。

車両関連の動向

205系電車がJR東日本の南武線、埼京線・川越線、中央・総武緩行線、京浜東北線・根岸線で相次いで運転を開始しました。
JR各社では、東北・奥羽本線用の719系、東海道本線・関西本線用の311系、高山本線・太多線用のキハ85系（JR東海）、快速「マリンライナー」用211系「スーパーサルーンゆめじ」、アーバンネットワーク用の221系（JR西日本）、特急「南風」等用の2000系試作車（JR四国）、鹿児島本線等用の811系、特急「ゆふいんの森」用キハ71系（JR九州）など、多くの新型車両が登場しました。
JR貨物では、コンテナ貨車などの新形式が導入されました。
第三セクター鉄道や私鉄でも新型車両が投入されました（秋田内陸縦貫鉄道AN-8900形、阪急電鉄8300系、くま川鉄道KT-100形、鹿児島市交通局2100形など）。
東武鉄道300型が上毛電気鉄道へ、西武鉄道1100系が伊豆箱根鉄道へ譲渡されました。
一部の貨車形式や西武鉄道501系（3代）、鹿児島市交通局460形などが消滅形式となりました。
近畿日本鉄道21000系がブルーリボン賞、九州旅客鉄道783系がローレル賞を受賞しました。

災害・事故

飯田線、阪和線、常磐線で列車事故が発生しました。

その他

阪神電気鉄道8000系の一部車両は、昭和最後の日である1月7日に竣工した「昭和64年製」という珍しい記録を持っています。

この年は、JR発足からまだ日が浅い中で、経営効率化に伴う地方路線の整理と、都市部や地域輸送を担う路線の設備投資・サービス向上が並行して進められた、日本の鉄道史における大きな転換期の一つと言えるでしょう。

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