装盾亜目

装盾類（Thyreophora）

装盾類は、「盾を持つ者」を意味する学名Thyreophoraを持つ、鳥盤類ゲナサウルス類に属する恐竜の一群です。前期ジュラ紀から白亜紀末まで、小型から超大型の種が全ての大陸に生息していました。全身を覆う鎧のような装甲が最大の特徴で、剣竜類や曲竜類などが含まれます。代表的な属としては、アンキロサウルスやステゴサウルスが挙げられます。

特徴

装盾類の名前の由来ともなっているのが、全身を覆う鎧のような皮骨です。初期の種は単純な鱗状の皮骨を持っていましたが、進化するにつれて、サゴマイザーや防弾チョッキのような複雑な構造を持つ装甲を発達させました。全ての装盾類は草食性で、前足は五指性、足指は3本または4本でした。体格の割に頭部は比較的小さく、頑丈に作られており、眼も大きくはありませんでした。骨格は重厚で、尾はやや長めでした。一部の種では、喉の下に密な皮骨を備えていました。他の恐竜と比較して成長速度は比較的遅く、砂漠から湿潤な森林まで、多様な環境に適応していました。
初期の種は二足歩行でしたが、肉食恐竜の大型化に伴い、自身も大型化し、体重を支えるために四足歩行へと進化しました。

語源

Thyreophoraは、ギリシャ語の「θυρεός（盾）」と「φορά（運ぶ）」に由来し、「盾を持つ者」という意味を持ちます。

発見と研究の歴史

装盾類の最古の化石は、1832年にイギリスで発見されたヒラエオサウルスです。この発見は、リチャード・オーウェンが恐竜という言葉を作り出すきっかけの一つとなりました。19世紀には、ヨーロッパでポラカントゥスやアカントフォリスなどの化石が発見されましたが、いずれも不完全なものでした。

19世紀初頭には、レグノサウルス（剣竜類）の下顎の断片、パラントドン、クラテロサウルスなどの化石が発見されましたが、断片的な情報しか得られませんでした。1850年以降には、スケリドサウルスのような比較的完全な化石が発見され始めました。当初、これらの化石はすべてスケリドサウルス類のメンバーと考えられていましたが、後に曲竜類や剣竜類の祖先に近い基盤的な鳥盤類を指すようになりました。

剣竜類の研究は、1874年にイギリスでスパイクを持つ大型草食動物の化石が発見されたことから本格的に始まりました。第二次世界大戦後には、アジア産のタラルルスやサイカニア、北アメリカ産のサウロペルタやシルヴィサウルスなど、曲竜類のより完全な化石が発見されるようになり、その外見がより明確になりました。1980年代には、オーストラリア大陸初の曲竜類であるミンミ、南極大陸初のアンタークトペルタが発見され、1990年代以降には、中国からティアンゼノサウルスやリャオニンゴサウルスなど、大規模な化石が発掘されました。同時期に、北アフリカではガルゴイレオサウルスとミモオラペルタが発見され、進化史における重要な発見となりました。

装盾類の下位分類

基盤的な装盾類（スケリドサウルス類）

基盤的な装盾類は、曲竜類と剣竜類につながる系統を形成するか、曲竜類との姉妹群関係にあり、剣竜類がより基盤的になるかのどちらかです。前期ジュラ紀に出現し、後期ジュラ紀には姿を消しました。これらの属は小型から中型で、頭部は大きくなく、頑丈な造りをしており、嘴は幅狭く、眼も大きくありませんでした。腹部はやや幅広く、尾は長かったのが特徴です。二足歩行または四足歩行で、腕と脚は柔軟性があり、走ることができました。鉤爪は鋭くなく、腕は短いものから長いものまでありました。小さな原始的なこぶのある皮骨でできた板を持っていました。代表的な種としては、スケリドサウルス、スクテロサウルス、エマウサウルス、ユシサウルスなどが挙げられます。

曲竜類

曲竜類は、アンキロサウルス科とノドサウルス科を含むEuankylosauriaと、パラアンキロサウルス類が主要なグループです。中期ジュラ紀に登場し、後期白亜紀に大繁栄しましたが、絶滅しました。皮骨の形態によって大別でき、皮骨の断面には繊細で複雑に絡み合ったスポンジ状の構造が見られます。

アンキロサウルス類

アンキロサウルス科は、Euankylosauriaの2つの科のうちの1つです。中期ジュラ紀から後期白亜紀まで存続し、アフリカ以外の世界中で繁栄しました。特徴的なのは、尾椎が融合して棍棒状になった尾です。捕食者を撃退したり、種内闘争に用いられたと考えられています。体格が良く、頭から尻尾まで骨の鎧で覆われていました。代表的な種は、エウオプロケファルス・トゥトゥスです。

ノドサウルス類

ノドサウルス科は、Euankylosauriaのもう一方の科で、アンキロサウルス科の祖先が含まれている可能性があります。中期ジュラ紀から後期白亜紀にかけて生息し、アンキロサウルス科と同様に装甲を持っていましたが、尾に棍棒はありませんでした。その代わりに、体の他の部分を覆っていた骨の隆起や棘が尾まで続いていました。サウロペルタやエドモントニアなどが代表的な種です。

パラアンキロサウルス類

パラアンキロサウルス類は、2021年に別の分類群として認識された、曲竜類よりも基盤的なグループです。Euankylosauriaとは異なり、ゴンドワナ大陸に分布し、南アメリカ南部、オーストラリア大陸、南極大陸から知られています。最も特徴的なのは、尾の裏側に扇状の構造を形成する平らな骨皮の配列からなる「マクアウィトル」と呼ばれる尾の武器です。ステゴウロスの化石から完全に知られており、おそらくアンタークトペルタの断片的な化石からも知られています。

剣竜類

剣竜類は、ステゴサウルス科とファヤンゴサウルス科からなります。中期ジュラ紀から後期にかけて全ての大陸（主に北半球）で生息しており、後期ジュラ紀に最も繁栄しました。全ての種がプレートとスパイクやサゴマイザーを持っていました。体に対して頭部が非常に小さく、単純な歯を持ち、脳の大きさは恐竜の中で最小でした。胴椎に沿った板や棘の列と、長い脊椎を持っていました。剣竜類の剣板は体温調節の役割や、種を識別するためのディスプレイ、求愛行動に使われたと考えられていましたが、単なる鱗の一種である可能性も指摘されています。ステゴサウルスやケントロサウルスが代表的です。

古生物学

生態

低い位置から中程度、高い位置のブラウザー（低木や潅木の葉などを含む多汁質の養分量の多い草類や、果実、芽、花などを選択的に採食する草食動物）あるいはグレイザー（生草や牧草などを含む粗飼料を選択しないで採食する草食動物）でした。ミラガイアのように高木を食べることに適した剣竜類も存在します。概して動きは速くなく、主に装甲で身を守りましたが、一部の種は発達した棘を武器としていました。

性的二形

剣竜類には、性的二形の可能性を示すいくつかの発見があります。ヘスペロサウルスの剣板には、幅の広い楕円形と幅の狭い背の高い形態の2つの形態があり、表面積の広い形態をオス、もう一方をメスとする説があります。また、ケントロサウルス、ダケントルルス、ステゴサウルスも、メスに3本の余分な仙骨があるという形で二形を示したとされています。

発声

2023年2月、曲竜類のピナコサウルス・グランゲリから発見された喉頭の化石に基づき、曲竜類が発声していた可能性が示唆されました。鳥の鳴き声のような発声であると報告されており、今後の研究によって、どのような声でコミュニケーションをとっていたかが明らかになる可能性があります。

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