女性科学者に関する年表

女性科学者に関する年表

この年表は、科学史において特筆すべき女性科学者の業績をまとめたものです。時代を追って、各分野で顕著な成果を上げた女性たちの功績を詳しく見ていきましょう。

17世紀以前

紀元前27世紀: エジプトの医学者メリト・プタハの記録が残っています。彼女は古代において医学に携わった女性の一人です。
400年頃: ヒュパティアは、アレクサンドリアの新プラトン主義哲学校の校長を務めました。彼女は哲学者、数学者、天文学者として知られています。
11世紀: サレルノ医学校でトロトゥーラが医師として活躍しました。彼女は『女性の病気』という医学書を著したとされています。
1150年頃: 中世ドイツのベネディクト会系女子修道院長ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは、医学に関する著作を残しました。彼女は医学、植物学、神学など多岐にわたる分野で知識を持ちました。

18世紀

1705年: ドイツのマリア・ジビーラ・メーリアンが、スリナムの昆虫に関する手彩色銅版画集『スリナム産昆虫変態図譜』を出版しました。彼女は昆虫学と博物学の分野で貢献しました。
1731年: ラウラ・バッシがボローニャ大学の教授に任命されました。彼女は物理学と哲学の分野で活躍しました。
1740年: エミリー・デュ・シャトレが『物理学教程』を出版しました。彼女は物理学、数学、哲学の分野で貢献しました。
1750年: マリア・アニェージがボローニャ大学の教授に任命されました。彼女は数学者として知られています。
1761年: フランスの天文学者ニコール＝レイヌ・ルポートが、彗星の回帰時期の計算などを行い、ベジエの科学アカデミーの名誉会員に選ばれました。
1766年: ジャンヌ・バレが、男性を装って植物学者フィリベール・コメルソンの助手として、ルイ・アントワーヌ・ド・ブーガンヴィルの世界一周探検航海に同行しました。彼女は世界一周を成し遂げた最初の女性となりました。
1783年: エカテリーナ・ダーシュコワがエカチェリーナ2世からロシア・アカデミー総裁に任命されました。彼女は科学アカデミーの院長も務めました。
1787年: カロライン・ハーシェルが兄ウィリアム・ハーシェルの助手として報酬を得るようになり、イギリスで科学的な仕事で公的な報酬を得た最初の女性となりました。彼女は天文学の分野で数々の発見をしました。
1794年: エリザベス・フラムが化学の著書『燃焼について』を出版し、金や銀の光化学作用、水の触媒作用について記述しました。
18世紀後半: イギリスのアンナ・ブラックバーンが、昆虫などの博物学コレクションを製作しました。

19世紀

1800年頃: ソフィ・ジェルマンが男性名で数学論文を発表しました。彼女は数論の研究で知られています。
1806年: ジェーン・マーセットが『化学談義』を出版し、好評を得ました。彼女は科学の普及に貢献しました。
1821年: メアリー・アニングがプレシオサウルスの骨格化石を発見しました。彼女は化石収集家であり、古生物学の分野で重要な発見をしました。
1842年頃: エイダ・ラブレスが解析機関に関する著作を行いました。彼女は世界初のプログラマーとして知られています。
1847年: マリア・ミッチェルが彗星を発見しました。彼女はアメリカの天文学者として知られています。
1849年: エリザベス・ブラックウェルが医学の学位を得ました。彼女はアメリカ初の女性医師の一人です。
1850年: アメリカの女性医師ハリオット・ハントが、ハーバード大学医学部の聴講を拒否されました。これは当時の女性に対する差別を示す出来事です。
1850年: アメリカにペンシルベニア女子医科大学が設立されました。これは女性の医学教育の機会を増やす上で重要な出来事でした。
1862年: オランダのアレキサンドリーヌ・ティニがスーダンのバハル・エル・ガザルの未踏地の探検を行いました。
1868年: クレマンス・ロワイエが『種の起源』をフランス語訳しました。彼女は生物学の分野で貢献しました。
1869年: イギリスのメアリー・サマヴィルが王立地理学会のパトロンズ・メダルを受賞しました。彼女は科学の普及活動に貢献しました。
1869年: スコットランドのエディンバラ大学に7人の女子学生が入学を許されましたが、学位は与えられませんでした。これは当時の女性の教育に対する制限を示す出来事です。
1870年: イギリスのエリザベス・ギャレット＝アンダーソンが、フランスで初めて医学博士号を取得しました。
1875年: マドレーヌ・ブレがフランス人女性としてはじめて医学博士号を取得しました。
1879年: オックスフォード大学が、女性への高等教育機会を目的としてサマーヴィル・カレッジを設立しました。
1881年: ウィリアミーナ・フレミングがハーバード大学天文台で観測結果の整理を始めました。彼女は天文学の分野で多くの発見をしました。
1882年: イギリスの植物画家マリアンヌ・ノースの植物画が王立植物園キューガーデンで一般公開されました。
1884年: ケンブリッジ大学に女性が運営する研究所Balfour Biological Laboratory for Womenが設立されました。
1885年: 荻野吟子が、近代日本初の公許女医となりました。
1887年: アメリカの魚類学者ローザ・スミス＝アイゲンマンが、夫カール・アイゲンマンとハーバード大学で南米の魚類の標本を共同で研究しました。
1889年: ソフィア・コワレフスカヤがストックホルム大学教授となりました。彼女は数学者として知られています。
1896年: フローレンス・バスカムがアメリカ地質調査所で働くようになりました。
1900年: クララ・イマーヴァールがブレスラウ大学で女性初の博士号を取得しました。

20世紀

1902年: ハータ・エアトンが電気学会（IEE）の会員に女性として初めて選ばれました。
1903年: マリ・キュリーがノーベル物理学賞を受賞しました。彼女は放射能研究の先駆者です。
1907年: イギリスの植物学者マリー・ストープスが来日し、北海道で白亜紀被子植物の探索調査を行いました。彼女は産児制限運動や性教育の分野でも活躍しました。
1910年: イギリスの植物学者リリアン・ギブズが、植物研究のためにボルネオ島のキナバル山に登頂しました。
1911年: マリ・キュリーがノーベル化学賞を受賞しました。彼女は異なる分野で2つのノーベル賞を受賞した最初の人物です。
1912年: ヘンリエッタ・スワン・リービットが、セファイド変光星の変光周期と絶対等級の関係を発見しました。
1913年: 黒田チカらが東北帝国大学（現・東北大学）で日本初の女子帝大生となりました。
1915年: エミー・ネーターがゲッティンゲン大学の教授となりました。彼女は数学者として知られています。
1916年: モード・スライが、純系マウスの繁殖を行い、癌の遺伝説を主張しました。
1917年: ノルウェーの植物学者テクラ・レスヴォールがオスロ大学で博士号を得ました。
1918年: ヴァイオラ・シェリー・シャンツがアメリカ合衆国魚類野生生物局で働き始め、動物学の研究を行いました。
1925年: イーダ・タッケらがレニウムを発見しました。
1926年: キャサリン・ブロジェットがケンブリッジ大学から最初に学位を得た女性となりました。
1927年: 丹下梅子がジョンズ・ホプキンス大学からPh.D.を受けました。
1927年: 保井コノが東京大学で理学博士となりました。
1931年: アグネス・ポッケルスの表面張力の実験の論文が認められ、ネイチャー誌に掲載されました。
1932年: 理化学研究所の辻村みちよが東京帝国大学（現・東京大学）から博士号を取得し、日本における女性農学博士第1号となりました。
1934年: 天文学の分野で功績のあった女性の非常勤の博士課程卒業者に贈るアニー・J・キャノン賞が創設され、第1回受賞者はセシリア・ペイン＝ガポーシュキンでした。
1934年: グレース・ホッパーがイェール大学で女性初の数学の博士号を取得しました。
1935年: イレーヌ・ジョリオ＝キュリーがノーベル化学賞を受賞しました。彼女はマリ・キュリーの娘です。
1938年: リーゼ・マイトナーが核分裂の発見に重要な役割を果たしました。
1939年: マルグリット・ペレーがフランシウムを発見しました。
1939年: 湯浅年子がフランスのコレジ・ド・フランス原子核化学研究所の研究員となりました。
1942年: シャーロット・アワーバックが、マスタードガスによってショウジョウバエの遺伝子に突然変異が発生することを発見しました。
1945年: キャスリーン・ロンズデール（結晶学者）とマージョリー・スティーブンソン（化学微生物学）が、女性として初めて王立協会の会員に選ばれました。
1947年: ゲルティー・コリがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
1948年: アグネス・アーバーがリンネ・メダルを受賞しました。
1952年: マーサ・チェイスがアルフレッド・ハーシーと共に、DNAが遺伝物質であることを裏付けるハーシーとチェイスの実験を行いました。
1953年: ロザリンド・フランクリンが、DNAの二重螺旋構造解明に繋がるX線回折写真を撮影しました。
1956年: リイシ・オテルマが、女性として初めてフィンランドで天文学の学位を得ました。
1958年: 日本婦人科学者の会が設立され、初代会長は阿武喜美子でした。
1964年: ドロシー・ホジキンがノーベル化学賞を受賞しました。
1965年: マリア・ゲッパート＝メイヤーがノーベル物理学賞を受賞しました。
1967年: ジョスリン・ベル・バーネルが、ケンブリッジ大学の大学院生時代にヒューイッシュらとパルサーを発見しました。彼女がノーベル賞を受賞できなかったことは議論を呼びました。
1969年: マーガレット・ハミルトンのチームが書いたコードが使われた誘導コンピュータにより、アポロ11号が月に着陸しました。
1972年: マーガレット・バービッジが、女性として初のグリニッジ天文台長に任じられました。
1973年: アイリーン・マントンがロンドン・リンネ協会の会長に選ばれました。
1975年: 呉健雄がアメリカ物理学会で最初の女性会長になりました。
1977年: ロサリン・ヤローがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
1980年: 数理科学に貢献した女性に送られるエミー・ネーター記念講座講師職が設けられました。
1981年: 猿橋勝子らによって女性科学者を表彰する猿橋賞が創設され、第1回受賞者は太田朋子でした。
1983年: バーバラ・マクリントックがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
1983年: ジュリア・ロビンソンが女性として初めてアメリカ数学会会長に就任しました。
1986年: リータ・レーヴィ＝モンタルチーニがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
1988年: ガートルード・エリオンがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
1995年: クリスティアーネ・ニュスライン＝フォルハルトがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
1996年: 米沢冨美子が女性として初めて日本物理学会会長に就任しました。
2000年: 岡崎恒子がロレアル-ユネスコ女性科学賞を受賞しました。

21世紀

2004年: リンダ・バックがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
2005年: 米沢冨美子がロレアル-ユネスコ女性科学賞を受賞しました。
2006年: ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞が設立されました。
2006年: フランシス・E・アレンが、コンピュータ科学における最高の賞であるチューリング賞を女性で初めて受賞しました。彼女の専門はコンパイラ最適化です。
2008年: フランソワーズ・バレ＝シヌシがノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
* 2008年: バーバラ・リスコフが、プログラミング言語の発展に寄与した功績でチューリング賞を受賞しました。

これらの女性科学者の業績は、科学史において重要なだけでなく、現代の科学技術発展の礎となっています。彼女たちの業績は、後の世代の科学者たちに多大な影響を与え、科学分野における女性の活躍を促す原動力となっています。

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