日本近代文学研究者で文芸評論家として活躍した笠原伸夫氏の生涯と業績を紹介する記事です。中世文学研究から出発し、近代文学における情念や、泉鏡花、谷崎潤一郎らの作品研究、さらに現代短歌や俳句論にまで及ぶ幅広い研究活動に焦点を当てています。
『源氏物語』五十四帖中、匂宮三帖の最終章にあたる「竹河」。髭黒大納言の死後、未亡人となった玉鬘とその娘たちの波乱に満ちた日々を描いた物語。薫や蔵人少将ら若者たちの恋物語も交え、玉鬘の苦悩と葛藤、そして運命が繊細に織りなされています。王朝社会の権力闘争や女性たちの生き様、そして儚い恋の物語が複雑に絡み合い、読者を魅了する名作です。
『源氏物語』の重要な巻の一つ「空蝉」。光源氏と謎めいた女性、空蝉との儚くも切ない恋物語を解説。源氏の執着と空蝉の気高さ、そして彼女を取り巻く複雑な環境、生涯を紐解きます。紫式部自身の投影とも噂される、魅力的な女性像に迫ります。
鎌倉時代末期に書写されたと推測される源氏物語の写本「穂久邇文庫本源氏物語」について解説。54帖揃いの貴重な写本で、その本文の系統や特徴、校本への採用状況、影印本の刊行状況などを詳細に記述。本文の保存状態や奥書、筆者、勘物、付属文書についても言及。
室町時代の連歌師、宗祇が著した『源氏物語』の注釈書『種玉編次抄』を紹介。巻の順序や年立に関する独自の解釈、先行研究との比較などを解説。宗祇の源氏物語研究における位置づけと、本書の成立過程、内容、翻刻本についても言及する。
谷崎潤一郎の代表作の一つである短編小説『秘密』。刺激を求める男が女装に目覚め、かつての愛人との逢瀬を重ねる中で、彼女の秘密を知り、新たな欲求に突き動かされる様を描いた作品です。明治時代の独特の雰囲気と、人間の深層心理を鮮やかに描き出した、耽美で官能的な物語です。
秋香台本源氏物語系図は、近世初期に書写された源氏物語系図です。現存する古系図の中でも最も古い形態を保ち、九条家本系統の代表的な完本として貴重な資料とされています。少ない人物数や独特の表記法、未整理な「不入系譜」など、その特徴は他の系図には見られない原始的な様相を今に伝えています。
紫式部作『源氏物語』に登場する架空の女性、秋好中宮の詳細な生涯と人物像、源氏物語における役割を解説。六条御息所と前坊の娘として生まれ、斎宮、女御、そして中宮へと上り詰めるまでの軌跡と、光源氏、冷泉帝らとの関係性を丁寧に紐解きます。
国文学者、俳句評論家として活躍した神田秀夫。東京帝国大学卒業後、国会図書館司書や複数の大学教授を歴任。現代俳句協会設立にも関わり、幅広い研究と評論活動で知られる。中世から近世の国文学、そして俳句におけるイロニーを深く研究し、多くの著作を残しました。その功績により現代俳句協会大賞を受賞。日本の国文学・俳句研究に多大な貢献を果たした重要な人物です。
源氏物語五十四帖のうちの第31帖である『真木柱』は、玉鬘と髭黒の結婚とその周囲の騒動を描いた物語です。巻名は、髭黒の娘が詠んだ歌に由来します。玉鬘の結婚は、源氏や北の方、そして周囲の人々に様々な影響を与え、物語に複雑な様相を織りなしていきます。
平安時代の故実書『簾中抄』の異本とされる『白造紙』について解説。関東大震災で焼失したものの、写真と『源氏物語』巻名目録「源シノモクロク」が最古の資料として注目されています。流布本『簾中抄』との比較を通して、両者の関係性や『白造紙』の価値を明らかにします。
鎌倉時代に成立した『源氏物語』注釈書『異本紫明抄』について解説。従来『紫明抄』の異本とされてきたが、近年の研究で先行する注釈書であることが判明。成立時期や著者、内容、写本、翻刻本などを詳細に解説します。平安時代文学、注釈書研究に最適です。
甲南女子大学所蔵の鎌倉時代の源氏物語写本、「伝藤原為家筆梅枝巻」と「伝冷泉為相筆紅葉賀巻」の概要を紹介。梅枝巻は河内本とは異なる特異な本文を持ち、勝海舟旧蔵の印も確認できる貴重な写本。紅葉賀巻は青表紙本系統だが独自異文も存在。両巻は、源氏物語研究に新たな知見を提供する重要な資料である。
『源氏物語』の成立論における重要な概念である「玉鬘系」と「紫上系」について解説します。武田宗俊の説を中心に、様々な学説やそれらに対する異論、そして第二部以降への展開までを詳しく掘り下げます。光源氏の恋愛模様や物語全体の構成を理解する上で欠かせない視点です。
『源氏物語』第二十二帖の巻名であり、主人公でもある玉鬘の生涯を描いた物語。夕顔の娘として生まれ、数奇な運命を辿る玉鬘の姿は、平安時代の女性の美意識や運命、そして物語の伏線を示唆している。多くの求婚者や、父である光源氏との出会いなど、波乱に満ちた人生をたどる。
鹿児島大学図書館に所蔵されている玉里文庫本源氏物語は、鎌倉時代の写本と室町時代の写本の2種類が存在する貴重な源氏物語コレクションです。近衛家ゆかりの写本と伝わるその歴史と、各巻の筆者や本文系統、そして主要な校本への採用状況について解説します。
慶長7年（1602年）に花屋玉栄によって著された『源氏物語』注釈書『玉栄集』は、同著者の『花屋抄』を簡略化し、初心者にも理解しやすい内容にまとめられた1巻1冊の書物です。既存の注釈書の難解さを批判し、本文理解を重視した構成が特徴です。伝本は少ないながらも、貴重な『源氏物語』研究資料として注目されています。
玉上琢弥は、日本の国文学者として知られ、特に『源氏物語』研究における貢献で有名です。谷崎潤一郎による『源氏物語』現代語訳の監修に携わった他、自身でも現代語訳を完成させました。その業績は国文学研究に多大な影響を与え、現在も高く評価されています。数多くの著書や校注・編著作品を残し、後世の研究者にも大きな影響を与え続けています。
谷崎潤一郎の長編小説『猫と庄造と二人の女』は、愛猫リリーを巡る、庄造とその前妻・品子、そして現在の妻・福子の複雑な三角関係を描いた作品です。昭和初期の日本を舞台に、嫉妬、愛情、そして猫への揺るぎない愛情が織りなす人間模様を繊細に描写。1936年の雑誌掲載後、映画やテレビドラマ化もされ、広く親しまれる名作となりました。
「狭筵（さむしろ）」は、古の源氏物語関連文献に頻出する謎めいた巻名です。様々な表記揺れが見られ、宇治十帖の異名説、外伝的作品という説があり、その実態は未だ解明されていません。古文献の記述を詳細に検証することで、その謎に迫ります。
片岡良一は日本の近代文学研究のパイオニアとして知られる法政大学教授です。1929年の「現代文学諸相の概観」発表で近代文学研究に新たな地平を切り開き、近代的自我史観を重視した独自の文学史観を確立しました。本稿では、その生涯、研究業績、そして日本の近代文学史における彼の貢献について詳述します。
江戸時代初期に刊行された源氏物語の版本の一つである「無跋無刊記整版本源氏物語」を解説。刊記や跋文がなく、本文のみで構成される簡素な装幀ながら、本文系統や刊行時期に関する考察が記述されています。源氏物語研究に貴重な資料と言えるでしょう。
江戸時代の源氏物語版本において、独自の題名を持たず『源氏物語』とだけ記された版本を「無印源氏」と呼びます。注釈や挿絵などを加えた豪華な版本が流行する中で、それらと区別するために用いられるようになった名称です。古活字本や整版本の中に確認されており、版本研究において重要な位置付けを持っています。本文のみで構成され、跋文や刊記がないことも多く、版本の特定が困難なケースも存在します。
鎌倉時代中期に二条為氏によって書写されたと伝わる『為氏本源氏物語系図』は、源氏物語の系図の中でも重要な古系図の一つです。九条家本と比較すると増補された点が見られ、多くの系図に影響を与えたと考えられています。本文書は、系譜、巻名目録、奥書などから構成され、巻名目録には興味深い特徴が見られます。為氏本は、源氏物語研究において貴重な資料となっています。
「為定本源氏物語系図」は、古系図に分類される源氏物語の系図で、二条為定の筆によるものと伝わる貴重な資料です。九条家本に近い特徴を持ちながら、独自の増補も見られる点が注目されます。本文では、その特徴や、他の系図との比較、収録人物数などを詳細に解説します。源氏物語研究において重要な資料の一つです。
『源氏物語』第14帖「澪標」は、光源氏の華麗な復活と、周囲の人々との複雑な関係、そして明石の御方や六条御息所との別れを描いた、物語の転換点となる重要な巻です。愛と別れ、栄光と陰影が織りなす、奥深い人間ドラマが展開します。
澤瀉久孝は、日本の国文学者、万葉学者として知られ、京都大学名誉教授を務めた人物です。万葉集研究に人生を捧げ、訓詁の重要性を説いた業績で知られています。代表作『萬葉集注釈』は高く評価され、朝日賞を受賞。弟子には著名な国文学者も輩出しました。
鎌倉時代前期の文人、源親行の生涯と業績を詳述。朝廷での役職、鎌倉幕府での仕え、承久の乱や伊賀氏事件への関与、そして『源氏物語河内本』をはじめとする主要な著作、交友関係までを網羅した詳細な解説です。和歌作品も紹介。
源氏物語に登場する源良清。光源氏の家来として仕え、明石の姫との縁談や光源氏の須磨への流罪など重要な場面に関わった人物です。本名は本文中に明記され、官職と共に記述される点が特徴的。その出自やその後の人生など、謎多き人物像に迫ります。
『源注拾遺』は、江戸時代初期の僧侶、契沖による『源氏物語』の注釈書です。旧注の集大成である『湖月抄』を元に、誤りや不備を訂正することを目的として書かれ、国学者による『源氏物語』注釈書の始まりとして重要な位置づけを持っています。独自の解釈や、仏教的教戒説からの脱却など、後世の注釈にも影響を与えた画期的な内容を含んでいます。
室町時代の歌人、宗祇が著した『源氏物語』注釈書『源氏雑乱抄』の詳細解説。本書は『種玉編次抄』を基に、宗祇自身の考察や、三条西実隆による批評を加えた内容で、源氏物語の年立に関する注釈書として貴重な資料となっています。成立時期や伝本の現存状況についても触れ、その歴史的意義を明らかにします。
源氏物語を題材とした絵画作品「源氏絵」の歴史を概観。平安時代から現代まで、絵巻物、屏風、扇面画、版本挿絵、浮世絵など多様な表現様式と、制作に関わった著名な画家の作品、そして『偐紫田舎源氏』を題材とした作品についても解説します。
源氏系図小鏡は、源氏物語の登場人物たちの系図を詳細に記した古系図の一つです。特に巣守関係の記述に特徴があり、複数の伝本が存在するものの、内容に違いが見られます。本文では、その概要、伝本の種類、翻刻された文献、参考文献などを解説します。源氏物語研究において貴重な資料となっています。
『源氏物語青表紙河内本分別條々』は、源氏物語の異本である青表紙本と河内本の違いをまとめた注釈書です。延徳2年(1490年)に大内政弘の命により猪苗代兼載が作成。本文の異同を簡潔に示す鑑定書のような性格を持ち、既存注釈書の記述を参考にしている点も特徴です。青表紙本の本文を高く評価する記述も見られます。
江戸時代の国学者、萩原広道による『源氏物語』注釈書『源氏物語評釈』の詳細解説。成立背景、刊行過程、構成、内容、そして他の同名著作との違いを分かりやすく解説します。古注釈研究の集大成として高く評価される本書の魅力に迫ります。
平安時代末期から室町時代にかけて行われた源氏物語の供養である源氏供養で読まれた表白文。紫式部や源氏物語を読んだ人々の冥福を祈る法会で用いられ、代表的な表白文として知られています。作者は安居院の法印聖覚と伝えられていますが、確実な証拠はありません。本文は和文体で書かれ、源氏物語各巻の巻名を順に詠み込んでいます。
様々な注釈書として伝わる『源氏物語聞書』。その成立年代や内容、編纂者は多岐に渡り、中には著名な歌人や学者の講釈を記録した貴重な資料も含まれる。代表的な肖柏によるものから、複数の異本が存在する注釈書まで、多様な『源氏物語聞書』の世界を探ります。
『源氏物語』に登場する500名以上の登場人物を整理した系図。複雑な人物関係や呼称を理解するために古くから作成され、江戸時代以降は木版本や活字本に付録として掲載されるのが一般的となりました。現代では独立したハンドブックとして提供されることも多く、様々な工夫が凝らされています。
与謝野晶子が『源氏物語』全54帖を題材に詠んだ和歌の連作「源氏物語礼讃歌」。その成立過程、様々な形態での伝播、そして現代における評価までを詳細に解説します。巻ごとの和歌の変遷にも注目し、晶子の創作活動の一端を紹介します。
江戸時代後期の国学者、本居宣長による『源氏物語』注釈書『源氏物語玉の小櫛』の詳細解説。40年にわたる研究の集大成であり、「もののあはれ」論を展開。近世源氏学の転換点として重要な位置づけを持つ名著です。巻構成、内容、刊行情報、影響、関連文献まで網羅した詳細な解説です。
江戸時代の国学者、賀茂真淵による『源氏物語』の注釈書『源氏物語新釈』の詳細解説。成立過程や構成、内容、そして様々な刊本や研究史までを網羅した、充実の内容です。国学による初期の『源氏物語』解釈の一端に触れられます。
江戸時代前期に成立した『源氏物語』の梗概書『源氏物語忍草』は、北村湖春著による貴重な注釈書です。5冊にわたる全54帖のあらすじを簡潔に記し、初学者にも理解しやすい平易な表現で知られています。写本として伝わったのち、天保年間に版本化され広く読まれるようになりました。本書は、源氏物語入門書として高い評価を受けています。
『源氏物語年紀考』は、本居宣長が『源氏物語』の登場人物の年齢を考察した注釈書です。一条兼良の説を改訂した画期的な内容で、図表も用いた構成が特徴です。宝暦13年頃成立し、その後も改訂が加えられました。本書は『源氏物語』研究において重要な文献です。
『源氏物語年立』は、一条兼良が著した『源氏物語』の年代考証書で、同作品を体系的に年代順に解釈した最初の試みとして知られています。本書は、登場人物の年齢や物語の時代背景を詳細に検討しており、『源氏物語』研究に重要な資料となっています。1453年の成立とされ、複数の伝本が存在します。
『源氏物語』の出来事を、主人公の年齢を基準に時系列で記述した年立について解説。旧年立・新年立の差異や、それらに伴う問題点、現代における議論の現状までを詳細に解説します。源氏物語研究における重要な概念と、その限界についても考察します。
『源氏物語』巻名目録とは、巻名を巻序に従って並べた文書のこと。古くから様々な形式が存在し、本文の冒頭・末尾、注釈書などに付記されることも。巻序の変遷や成立事情を解明する上で重要な史料であり、本文の構成を知る手がかりとなる。
『源氏物語』の各巻の題名にちなんだ和歌、または歌集を解説。巻名の由来となった歌、巻名を詠み込んだ歌、さらには巻名歌を模倣した歌集まで、多様な形式と歴史を紐解きます。平安時代から江戸時代までの作品、著名な歌人たちの作品例も紹介。
『源氏物語』全54帖のあらすじを、各帖のテーマや主な出来事を簡潔にまとめた記事です。登場人物たちの複雑な恋愛模様や、栄華と没落、そして物語全体を彩る王朝文化の華やかさ、哀愁を1000文字以上の詳細な解説で紐解きます。
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて作成された『源氏物語』登場人物の系図、『源氏物語古系図』について解説する記事です。三条西実隆による系図整理以前のものを指し、祖本からの伝写や修正の過程、内容、分類、主な写本、意義、そして『巣守物語』との関連性などを詳しく解説します。
『源氏物語別本集成』は、様々な写本を比較検討した貴重な校本です。特に、影印本や翻刻本が存在しない別本を多く収録しており、源氏物語研究に大きく貢献しました。全15巻と続編15巻からなり、80名以上の研究者によって綿密な校訂が行われています。コンピュータを活用した先駆的な取り組みでも注目されています。
室町時代の連歌師、宗祇が著した『源氏物語』注釈書『源氏物語不審抄出』について解説。成立時期、内容、翻刻・影印本、参考文献などを網羅した詳細な解説記事です。宗祇の『源氏物語』解釈の一端に触れることができます。
平安時代から鎌倉時代にかけて、人々の間でどのように『源氏物語』が受け止められていたのかを考察した学術概念「源氏物語の類」について解説します。本文では、当時の『源氏物語』の多様な形態や、それが現代の54帖本へと一本化される過程を詳述します。
『源氏物語』は、平安時代の宮廷を舞台に、主人公光源氏の波乱に満ちた生涯を描いた長編物語です。物語には魅力的な女性や個性豊かな登場人物たちが数多く登場します。華麗なる恋物語、権力闘争、そして人間の心の機微を繊細に描いたこの作品の魅力を、主要な登場人物の紹介を通してご紹介します。
『源氏物語』は54巻から成る長編物語ですが、その巻の並べ方（巻序）は古くから様々なバリエーションが存在しました。本稿では、現代の巻序と、歴史的に存在した様々な巻序の変遷、そしてそれらが示唆する『源氏物語』成立当時の状況について解説します。平安時代の物語成立過程や、現代の読解に繋がる重要な論点です。
『源氏物語』は795首もの作中歌を含み、平安時代の貴族文化と文学表現を深く反映しています。作中歌は物語の構成要素としてだけでなく、登場人物の心情や個性を鮮やかに描き出し、後世の歌人たちにも多大な影響を与えました。本文では、作中歌の役割、人物描写における効果、先行する和歌との関連性、そして『源氏物語』における和歌の位置づけについて詳細に解説します。
江戸時代末期までに成立した『源氏物語』の注釈書、いわゆる「古注釈」を網羅的に解説した一覧です。各注釈書の成立時期、巻数、著者といった情報を網羅し、関連研究文献も併せて紹介することで、『源氏物語』研究における古注釈の位置づけを明確にします。初心者から研究者まで幅広く活用できる貴重な情報源です。
この項目では、源氏物語の多様な写本を網羅的に解説します。各写本の名称、書写年代、現存巻数、所蔵機関などを一覧形式で示し、主要な校本についても詳細な情報を提供します。さらに、写本研究の基礎となる参考文献や、複数の写本をまとめて解説した文献なども紹介することで、源氏物語研究の深化に貢献します。
「源氏物語のおこり」は、『源氏物語』成立に関する伝承を記した文書です。紫式部が石山寺で霊感を得て執筆した、あるいは藤原彰子の依頼で創作したとする複数の説話が混在し、近世以降は史実として疑問視されていますが、成立背景の一端を垣間見せる貴重な資料です。様々な写本が存在し、内容に差異が見られます。
源氏物語の写本を識別するための写本記号について解説。主要な校本における記号体系、使用例、注意点などを詳細に説明。様々な研究における記号の扱いや、一文字記号と二文字記号の使い分け、同一写本への異なる記号の付与例、逆に同一記号による異なる写本の指定例などを網羅。
源氏物語の巻数に関する説話である「源氏物語60巻説」について解説する記事です。古くから伝わる説話とその根拠、近年の研究動向までを詳細にまとめ、60巻説の謎に迫ります。鎌倉時代から存在した説話とその歴史的変遷、そして現代における新たな解釈についても分かりやすく解説します。
江戸時代前期、儒学者熊沢蕃山が著した『源氏物語』注釈書『源氏外伝』。儒学者による唯一の注釈書として貴重で、独自の解釈が展開されています。現存する写本は部分的なものですが、その成立背景や伝本の歴史、そして現代における研究状況を詳細に解説します。
「源氏和秘抄」は、一条兼良が初心者向けに著した『源氏物語』注釈書です。宝徳元年（1449年）に成立した本書は、難解な語句を解説する入門書として、後の本格的な注釈書への橋渡しを目的としています。複数の伝本が存在し、現代ではいくつかの翻刻本も刊行されています。本書は『源氏物語』入門者にとって貴重な資料です。
『源氏六十三首之歌』は、『源氏物語』全巻の巻名を詠み込んだ歌集。平安末期から鎌倉時代に成立、現存するのは島原市立島原図書館所蔵の一写本のみ。63首から成るはずが、現存は62首で、独自の巻名順や63巻説という特徴を持つ貴重な資料です。
中世日本の文化「源氏供養」を解説。紫式部と『源氏物語』への供養、その背景にある仏教思想、そして能楽作品や文学作品における源氏供養の表現方法を詳細に考察します。様々な文献資料に基づいた詳細な解説で、源氏供養の世界を深く理解することができます。
平安時代末期から鎌倉時代にかけて成立した願文「源氏一品経」について解説。源氏物語の作者・紫式部や読者への供養である「源氏供養」の際に用いられた代表的な願文で、仏教思想に基づいた源氏物語の捉え方や、巻数の数え方、翻刻情報などを詳述。
『源氏物語』に登場する源典侍。高齢ながら色好みで知られる高級女官。紅葉賀、葵、朝顔の巻に登場し、源氏や頭中将を翻弄する姿が描かれる。琵琶の名手としても知られ、教養と才気あふれる人物像が魅力。晩年は尼となり、波乱に満ちた生涯を送った。
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した、源光行。政治家、歌人、文学者として朝廷と幕府をつなぎ、源氏物語研究の第一人者でもあった彼の生涯と業績を詳述します。数々の和歌や著作、そして幕府高官としての役割、承久の乱における決断など、多角的に人物像に迫ります。
北村季吟による『源氏物語』注釈書『湖月抄』は、江戸時代を通じて最も広く読まれた注釈書の一つ。本文の全文に加え、詳細な注釈が施され、『源氏物語』を理解する上で重要な役割を果たした。後世の研究者にも大きな影響を与え、現代の『源氏物語』解釈にも活用されている。
随筆家、渡辺たをり氏に関する記事です。谷崎潤一郎の縁戚にあたる氏の人生や、祖父である谷崎潤一郎との思い出、執筆活動について詳細に記述しています。華麗なる一族と、たをり氏の歩み、そしてたをり氏による谷崎潤一郎に関する著作に焦点を当てた内容です。
源氏物語に登場する浮舟の母を解説。宇治八の宮の北の方の姪で、八の宮との間に浮舟をもうけるも、認知されず陸奥守の後妻となる。浮舟の将来を案じ、様々な葛藤や決断を経験する複雑な人物像を、詳細なエピソードと共に紐解きます。
能楽の演目『浮舟』は、源氏物語の登場人物を題材にした作品です。横越元久と世阿弥の合作で、世阿弥は本作を絶賛しています。宇治川で起こる悲劇と、死後の霊の救済が描かれ、観世流の代表作として知られています。
『源氏物語』宇治十帖の第7帖「浮舟」の巻解説。登場人物である浮舟の生涯や、薫と匂宮の三角関係、そして悲劇的な結末までを詳細に解説。和歌や作品への影響についても言及しています。平安時代の宮廷を舞台にした恋愛物語の複雑さと奥深さを味わえます。
詩人、国文学者として活躍した浅野晃の生涯と業績を紹介する記事です。初期のマルクス主義への傾倒から、国粋主義への転向、そして詩集『寒色』で読売文学賞を受賞するまでの道のりを、詳細な年表と豊富な書誌情報と共にたどります。三島由紀夫との交流についても触れ、多角的な視点から浅野晃像に迫ります。
源氏物語の注釈書や系図などに登場する謎の巻名「法の師」について解説します。現存する54帖には含まれませんが、複数の説が存在し、その存在の有無や位置付けは未だに議論の的となっています。夢浮橋の異名とする説や、夢浮橋の続きとする説、さらには補作である雲隠六帖との関連性など、複雑な歴史的経緯を紐解きます。
今治市河野美術館が所蔵する源氏物語写本「河野美術館本源氏物語」について解説します。鎌倉時代に書写されたと推定される貴重な写本で、複数の巻が収蔵されています。複数の校本に採用され、研究において重要な役割を果たしている点も解説します。
『河内本源氏物語校異集成』は、既存の校本『源氏物語大成校異編』を補完する形で編纂された、河内本系統の写本を主に用いた『源氏物語』の校異集成です。河内本の特徴を詳細に示し、本文成立過程の解明に大きく貢献しました。約2万4千もの校異と補訂箇所を収録し、『源氏物語』研究に欠かせない一冊となっています。
鎌倉時代に源光行・親行父子が作成した『源氏物語』写本系統である河内本について解説。複数の古写本を校合し、成立過程や特徴、主要写本、関連研究書などを詳細に記述。青表紙本との比較も交えながら、河内本が『源氏物語』研究に与えた影響を多角的に考察します。
国立歴史民俗博物館（歴博）が所蔵する源氏物語写本群「歴博本源氏物語」について解説。中山本、帚木帖、手習帖など、それぞれの写本の歴史的背景、本文の特徴、異本としての価値を詳細に記述。さらに、影印本の出版情報も掲載。源氏物語研究に欠かせない貴重な資料群を分かりやすく紹介する。
谷崎潤一郎の代表作『武州公秘話』は、戦国時代を舞台に、型破りな武士の生涯を描いた歴史小説です。連載開始から中断、単行本化を経て、独特の語り口と衝撃的な展開で読者を魅了し続けています。ヒッチコック的とも評される構成や、歌舞伎化された経緯など、作品を取り巻く様々なエピソードにも注目です。
室町時代中期、歌人・僧侶の正徹が作成した源氏物語写本『正徹本』について解説します。冷泉家伝来の写本を底本に、複数の写本を校合したと考えられています。青表紙本系統に属するものの、独自の異文も含まれ、源氏物語の伝播史における重要な位置づけを持つ写本です。現存する写本、校本への採用状況、翻刻情報などを詳細に記述します。
鎌倉時代中期に成立した源氏物語系図『正嘉本源氏物語系図』の詳細解説。複数の古系図を校合し作成された経緯や、現存する2つの伝本、系図の内容、構成、特筆すべき点などを丁寧に解説します。源氏物語研究に欠かせない貴重な資料です。
国文学者として活躍した橘純一の生涯と業績を紹介する記事です。東京帝国大学卒業後、教育者や著述家として活動し、国語解釈学会の創立や教科書への意見表明など、国文学の発展に貢献しました。多岐にわたる著作や編纂物にも注目です。
「橋本本源氏物語」は、鎌倉時代中期の源氏物語写本で、言語学者橋本進吉氏旧蔵。国文学研究資料館に所蔵され、その価値と謎に満ちた歴史から、源氏物語研究において重要な位置を占める写本です。本文系統や筆者特定など、未解明な点も多く、今後の研究が期待されます。
『源氏物語』五十四帖中、宇治十帖の第一帖にあたる「橋姫」。光源氏の異母弟である八の宮と、その養育する二人の姫君、そして薫との関わりを描いた、謎めいた物語です。巻名は薫の歌に由来し、八の宮の異名である「優婆塞」も古くから知られていました。物語は、薫と八の宮、そして姫君たちを取り巻く様々な謎と秘密を巡って展開していきます。
『源氏物語』五十四帖中、第37帖の巻名「横笛」。夕霧の夢枕に立った柏木が、自身の遺品である横笛を光源氏に託すよう告げる場面から始まる物語。光源氏の晩年、過去の恋と現在の薫への思いが交錯する中で、横笛は様々な人物を巡り、物語に深い余韻を残します。柏木と光源氏、そして薫を繋ぐ、哀愁漂う横笛の物語を紐解きます。
『源氏物語』における謎めいた高僧、横川の僧都。比叡山の横川を拠点に修行し、宮廷からも信頼される人物像。浮舟の運命を大きく左右する存在として、物語に深みを与え、その実像をめぐって様々な議論が展開されています。母や妹との複雑な家族関係、そして源信との関連性も注目すべき点です。
鎌倉時代中期に書写されたと考えられる源氏物語の写本、横山本源氏物語に関する解説。49帖が現存するものの、数帖が欠けており、本文系統は青表紙本と別本が混在する特徴を持つ。校異源氏物語や源氏物語大成校異編にも採用された歴史を持つが、現在の所在は不明である。
「榊原家本源氏物語」は、越後高田藩榊原家に伝来した源氏物語の写本です。室町時代の筆跡とみられる桐壺など、現存する17帖は鎌倉時代中期から末期にかけての貴重な資料です。現在、国文学研究資料館に所蔵され、複数の校本に採用されています。源氏物語研究において重要な写本として知られています。
『源氏物語』五十四帖中、第四十六帖にあたる「椎本」。宇治十帖の第二帖で、薫の恋と八の宮の最期、そして匂宮と中君の恋の行方が描かれる。平等院をモデルとする夕霧の別荘を舞台に、悲恋とロマンスが交錯する物語。様々な歌や出来事が、登場人物たちの複雑な感情を浮き彫りにする。
『源氏物語』第32帖「梅枝」のあらすじと解説。光源氏の39歳の春、明石の姫君の裳着、薫物合わせ、そして弁少将の歌、さらに雲居の雁と夕霧の恋の行方など、華やかさと陰影が交錯する物語を詳細に解説します。源氏の苦悩や周囲の人々の思惑も丁寧に紐解き、物語の魅力を余すことなく伝えます。
源氏物語の古注釈や目録などに現れるが、現存しない巻物「桜人」について解説。玉鬘や蛍兵部卿宮らとの関連性、複数の文献における記述、その位置付け、そして失われた理由などを詳細に考察します。源氏物語研究において重要な謎を解き明かす試みです。
桐箱は、桐材を使用し、高い保存性から書画や工芸品、文化財の保管に古くから用いられてきた日本の伝統工芸品です。その優れた特性から、現代でも高級品を保管する容器として重宝されています。文化庁により選定保存技術にも指定されており、日本の伝統技術を守り伝える上で重要な役割を担っています。この記事では、桐箱の歴史、特徴、用途、そして現代における利用状況について詳しく解説します。
『源氏物語』の主人公光源氏の母、桐壺更衣の生涯と人物像を詳細に解説。後宮のしきたりや、彼女を取り巻く複雑な人間関係、そして早世という悲劇的な最期まで、物語を読み解く上で重要な情報を網羅しています。楊貴妃との類似点など、興味深い考察も加え、桐壺更衣という女性像を多角的に浮き彫りにします。
『源氏物語』の主人公、光源氏の父である桐壺帝の生涯と、周囲の人物像を詳細に解説した記事です。寵愛した桐壺更衣との悲恋、そしてその死後の出来事など、物語における重要な役割と、その複雑な人間関係を丁寧に紐解きます。
『源氏物語』の36帖「柏木」を解説。主人公柏木の生涯、女三宮との密通、そして悲劇的な最期までを、詳細なあらすじと人物像と共に分かりやすく解説します。源氏物語の世界観を深く理解する上で必読です。
室町時代に成立した能「松風」は、観阿弥の作品を世阿弥が改良したとされる秋の曲です。須磨に流された在原行平と海人の姉妹の悲恋を、繊細な謡と舞で表現した名作。その美しくも切ない物語と、幽玄な世界観は観る者の心を深く捉えます。
『源氏物語』第18帖「松風」のあらすじと解説。光源氏31歳、二条東院完成後、明石の御方を迎えようとするも、明石入道の事情により、大堰川の山荘に滞在することになる。3年ぶりに再会した源氏は明石の御方と娘の愛らしさに心を奪われ、姫君の将来を案じる。紫の上の協力を得て姫君の養育を決め、明石の御方の心情にも配慮する源氏の複雑な心境を描く。
東洋大学図書館が所蔵する源氏物語の写本群「東洋大学本源氏物語」について解説します。複数の写本があり、それぞれ本文系統や特徴が異なっています。河内本系統、青表紙本系統、阿仏尼本系統とされる写本が含まれ、室町時代から江戸時代の書写、古筆鑑定家の鑑定記録などが残されています。これらの写本の詳細な内容や歴史的価値、他の写本との関係性などを解説します。
室町中期の写本である東京大学本源氏物語は、東京大学総合図書館に所蔵されている貴重な史料です。全54帖からなる同筆による一筆本で、デジタルアーカイブでも公開されています。本文系統については諸説ありますが、河内本系、青表紙本系、別本系の特徴を併せ持つ複雑な様相を見せています。保坂本との類似性も指摘されており、源氏物語研究において重要な資料となっています。
国立国会図書館所蔵の「東久邇宮家旧蔵本源氏物語」は、54帖揃いの貴重な写本です。青表紙本系統に属し、独自の異文も見られますが、三条西家本に近似。本文のみで注釈や奥書はなく、書写者も不明。近年、特異な本文が注目され、学術的な研究対象となっています。特に紫上の父親の官職表記における「兵部卿宮」と「式部卿宮」の記述の差異は、写本成立過程を解明する上で重要な論点となっています。
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。